[2008年12月号]経理会計規程の策定について[増刊号➀]

 最近、J-SOX(いわゆる内部統制)の影響で、中国現地法人においても経理・会計規程を作成する事例が増えています。J-SOXは日本親会社が主に上場会社である場合に、海外子会社である中国現地法人に経理・会計規程や董事会規程、決裁権限規程等の規程類を整備することを要請するものです。経理・会計規程について言えば、日本の会計制度と中国の会計制度の違いから、日本親会社の経理担当者と中国現地法人の会計担当者との意思疎通に齟齬が生じがちです。そこで、会計方針や会計処理手続を文書化(規程化)しておくことは、日本親会社が上場会社か否かにかかわらず、会計・決算に関する日中間のお互いの理解を深めることにとって非常に有効です。
中国現地法人の経理・会計規程を策定するにあたっては、日本親会社を中心とした連結グループ内で整合した経理・会計規程を作成することが望まれることから、日本親会社の経理・会計規程を中国現地法人向けにカスタマイズすることになります。
下図は、カスタマイズにあたってよくある論点をまとめたものです。
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上図1の「勘定科目体系に起因するカスタマイズ」に際しては、日本と中国の勘定科目の違いを調整するわけですが、重要なことは各勘定科目の意味・内容を文書化しておくことによって、日中の経理・会計担当者の認識を共有できるようにしておくことです。
上図2の「会計・税務制度に起因するカスタマイズ」については、日本と中国の会計・税務制度が異なることから、中国内の現地法人向けにカスタマイズが必要となります。
上図3の「中国の実務に起因するカスタマイズ」については、日本親会社と中国現地法人では人員規模や賞与・退職金の支給等に関する考え方が異なるため、会計規程上もカスタマイズが必要ということです。
上図4の「経営範囲に起因するカスタマイズ」は、日本では経営範囲によって業務内容が制限されることがあまりありませんので、多様な取引にかかる会計処理が規定されますが、中国現地法人向けの会計規程にカスタマイズするにあたっては、「できること・できないこと」を考慮する必要があります