【2019年11月】外商投資法が来年1月から施行 機関設計の変更に伴う留意点について

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本年 3 月に外商投資法(主席令第 26 号)[i]が公布され、202011日より施行されます。これにより、現行の外資三法(中外合作経営企業法、中外合弁経営企業法、外資企業法)は廃止され、これらに代わり会社法が全面的に適用されます[ii]

実務的には、会社法(2005年改正)[iii]の施行により、外商投資企業は既に会社法を重畳的に適用しています。特別法である外資三法が会社法に対して優先適用されるものの、特に2006 年以降に設立された外資全額出資の企業(外商合弁を含む)に関しては、基本的に現行の会社法を踏襲しており特段の問題は生じ得ませんが、特に中外合弁或いは中外合作企業等では機関設計や三項基金(準備基金、従業員奨励福利基金、企業発展基金)等についての変更を求められます。
 尚、外資三法から会社法への組織形態の変更については5 年間の移行期間が設けられ[iv](外資三法と会社法の差異については、次頁・表1を参照のこと)、また関連補充規定が別途公布される予定であり、ご注意ください。

本稿では、この機関設計に関して寄せられた質問の一つをQ&A形式で解説します。

Q:当社は中外合弁企業の設立を予定しており、中国企業と当社の出資比率は3175%:25%)です。

中外合弁経営企業法及び同実施条例に基づく機関設計では、4項目(①定款の修正、②増資・減資、③会社合併、分立、④解散、組織変更)の重要事項については、現行法に基づき最高意思決定機関である董事会の全会一致を前提[v]とした現地法人を管理・運営が可能と理解しています。一方、会社法では株主会が最高意思決定機関であり、重要事項などの特別決議は三分の二で可決されることになる為、外商投資法の施行後に現地法人を設立した場合、上記事項は少数株主の意向が従来よりも反映しづらくなると危惧しています。

 

A:ご理解の通り、外商投資法下では会社法が適用され、株主会が最高意思決定機関であり重要事項などの特別決議は三分の二で可決される為、現行法と比して、少数株主の意向が従来よりも反映しづらくなる建付けとして規定されています。実務的には、株主間で決議に対する拘束的な条項を別途取り決めるなどにより、ある一定の抑止力を設けるケースもあり得ます。
但し、今後公布される関連補充規定も併せて参照し、実務的には専門家へご相談ください。

尚、20151月に公表された、外商投資法の前身ともいうべき外国投資法草案(本草案は今回正式に採択された外商投資法の草案とは異なります)[vi]は外資三法の抜本的な改定草案であった為、外資への影響が大きく、審議は遅々として進展しませんでした。しかし、外資三法に代替すべき新法の制定は喫緊の課題であった為、同法を衣替えした外商投資法草案は昨年12月の初回審議から僅か3か月足らずで成立しており、外国投資法(全 11 章・計 170 条)と比較して、外商投資法は全 6 章(計 42 条)から構成され、極めて簡潔な内容となっています。 

従いまして、外商投資法では大枠の提示のみに止まった国家安全審査や外商投資情報報告制度や、VIE スキーム[vii]による市場参入が外国投資に該当するのか否かなどについては、今後、公布される詳細規定を慎重に確認する必要がある点にも留意が必要です。

【表1

 


[i] 外商投資法(主席令第 26 号)の原文は下記URLを参照のこと。

 URL: http://www.gov.cn/xinwen/2019-03/20/content_5375360.htm 

[ii] 同法第31条を参照のこと。

[iii] 現行会社法(2018年改正)の原文は下記URLを参照のこと。

URL:http://www.moj.gov.cn/Department/content/2019-01/16/592_226957.html 

[iv] 同法第42条を参照のこと。

[v] 同法実施条例第33条を参照のこと。

[vi] 同法草案の原文は下記URLを参照のこと。

 URL: http://tfs.mofcom.gov.cn/article/as/201501/20150100871010.shtml

[vii] VIEVariable Interest Entity/変動持分事業体)スキームとは、外国投資者が内資企業に形式的にライセンスを保有させ、契約条件及び資金提供等を通じ実質支配し市場参入する方式。外商投資法の前身ともいうべき外国投資法ではこのVIE スキーム(或いは WOFE スキーム)が外国投資と看做され、ネガティブリストによる参入規制を受けるか否かの取扱いは留保された。外国投資法では “契約、信託等の方式による国内企業の支配或いは国内企業に対する権利の保有”による投資活動が外国投資行為と規定されていたが、外商投資法では曖昧な状態で留保されており、注意を要する。