【2017年8月】日本への非貿易送金の手続及び留意点

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日本本社と中国現地法人の間では、商品の売買(貿易)取引以外のエンジニアの派遣・ロイヤリティの供給・コンサルティング役務の提供・ITサービスの提供などが、日々発生しています。このような「非貿易」取引に対し、日本へ送金するための手続及び留意点にどのようなものがあるかという相談をよく受けますので、今回はこのテーマについて解説したいと思います。 

中国では、日中間の資金移動を次のように分類しています。

1)資本取引 : 資本金の送金、親子ローンの送金及び返済、利益配当の送金など。

2)経常取引 : 経常取引の中でさらに「①貿易取引」と「②非貿易取引」に分類されています。

  ①貿易取引  ⇒モノに関する輸出入取引で、通常の通関手続が行われます。

  ②非貿易取引⇒モノ以外の取引を指します。

資本取引に対して、中国ではまだ外貨規制が厳しく実施されています。 

【非貿易送金の全体の流れ】

STEP1: 商務委員会、税務局へ契約書の届出手続の実施(ロイヤリティ、技術、ノウハウ関連の送金の場合は必要)。実施不要な場合、STEP3へ。

STEP2: 商務委員会、税務局の許可。

STEP3: 税務局への増値税及び源泉所得税の納付。

STEP4: 銀行への所要資料(契約書、請求書、納税証明など)の提出、送金依頼。

1回5万ドル以上の送金であれば、外貨管理局の審査を受ける。

STEP5: 日本本社へ送金。

【留意点】

1) 非貿易送金の内容として、エンジニアの派遣・ロイヤリティの提供・コンサルティング役務の提供・ITサービスの提供などがよく発生しています。会計処理上では、費用として記帳します。税務上の観点ではこのような費用に対し、現地法人にとって受益性があるか、価格設定の妥当性があるかと、問われる可能性があります。

受益性と価格設定の妥当性に問題があれば、税務上で損金不算入となり、25%の企業所得税が追徴されるリスクがあります。

税務上のリスクを回避するため、送金の内容、成果物、派遣スタッフの中国滞在明細の準備などについて、事前に確認する必要があります。

2) 届出が必要な送金内容については、契約書が締結された後、届出手続の実施を忘れないようにします。 

3) 増値税の税率は通常6%です。一方、源泉所得税の税率は、①ロイヤリティ(使用料)の場合は10% ②サービス費(役務提供)の場合はみなし利益率(通常30%~40%程度)×25%(中国の法人税率)となりますので、7.5%~10%となります。 

4) 1回5万ドル以下の送金の場合、納税証明の提出は不要ですが、納税手続を実施する必要があります。