【2017年7月】特別納税調査調整及び相互協議手続管理弁法の発表

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 ご存知の方が多いと思いますが、2017年3月28日、北京の国家税務総局はBEPS対応への取組の一環として、特別納税調査調整及び相互協議手続管理弁法(2017年第6号公告)を発表しました。主な改定内容は以下の通りです。

企業による自主修正申告

第3条:税務当局は関連者申告、同時文書、利益水準に対するモニタリングにより、特別納税調整の監督管理を行い、企業に特別納税調整リスクがあることを発見した場合、リスク提示のための《税務事項通知書》を送付します。企業が税務リスク提示を受けた場合又は特別納税調整リスクに気づいた場合、修正申告を行うことが可能です。企業が修正申告を行う場合でも、税務当局は特別納税調査を実施することが可能です。

解説:

 これは《特別納税調整の監督管理に関する問題の公告》(2014年54号公告)の規定を改めて明確にしたものです。企業による自主修正申告は税務当局にとって、正式な立件調査より行政手続がシンプルで手間がかからなく、交渉する余地が大きいとして、実務上よく運用されていますが、自主申告した場合でも事後に税務当局による移転価格調査がありうることに注意する必要があります。

5年の追跡管理期間の規定削除

解説:

 《特別納税調整実施弁法(試行)》(国税発09年2号文)の第45条では、税務当局は移転価格調査を実施した翌年から5年間にわたり、追跡管理を実施しなければならず、企業は追跡管理期間中の毎年6月20日までに同時文書を提出しなければならないとしていますが、今回の公告では5年間という期間もなく、同時文書提出の規定もなくなりました。そもそも、中国の移転価格調査の時効が10年で、追跡管理の5年を足すと、15年という世界でも他に類を見ない異常な長期間の運用体制がしばしば問題視されています。一方、昨年9月にグレードアップされた税務申告システム(金税3期)のデータ分析、監督監視能力が格段に向上し、追跡管理がなくても、税務リスクを素早く把握できるシステムができていることが背景にあるように思われます。従って、5年の追跡管理がなくなるということは移転価格調査を緩めることではなく、5年以上経過しても、監督管理し続けることを意味します。

国内関連取引の取扱

第38条:実際の税負担が同じ国内関連者間の取引については、当該取引が直接又は間接的に国家の全体的な税収を減少させていない場合、原則上、特別納税調整を実施しません。

解説:

 国内関連者間取引が移転価格調査の対象外であることが一般的ですが、2015年発表された《特別納税調整実施弁法(意見募集版)》の第50条では、国内の関連者間取引について、当該実施弁法を適用しないとしていました。今回の公告では、上記の内容が削除され、国内関連者間取引についても移転価格の調査対象となることが分かりました。ただし、直接又は間接的に国家の全体的な税収を減少させていない場合、原則上、特別納税調整を行わないという09年2号文の従来の規定に戻りました。今後、税率の相違(15%と25%)、欠損金の有無により、税収を減少させる可能性のある国内関連者間の取引についても、注意する必要があります。