2009年7月6日付国家税務総局より『クロスボーダーの関連取引の監視および調査の強化に関する通知』(国税函[2009]363号)が公布されました。
『限定された機能およびリスクを負担する企業に損失が生じた場合には、同時文書作成の基準に達しているか否かにかかわらず、損失が生じた年度については同時文書およびその他の関連資料を準備するとともに、翌年の6月20日までに主管税務機関に報告送付すること。』と規定されています。
(1)免除規定との関係
上海マイツ通信2009年2月号号外でお知らせしたように、以下の3つの要件のうちいずれか一つを満たす企業は同時文書の作成は免除されますが、限定された機能、リスクを負担する企業に損失が生じた場合は免除されません。また通常は、同時文書は5月31日(2008年度は12月31日)までに準備(税務機関から要求があった場合に提出)ですが、6月20日までに税務機関に提出する必要があります。
1.年間の関連仕入販売金額(来料加工の場合、年度輸出入通関価格で計算)が2億元以下で、かつ、
その他関連取引金額(関連貸付は利息の受取支払金額により計算)が4000万元以下の場合。
2.関連取引が事前確認(APA)の対象範囲に入っていること。
3.外資持分が50%以下で、かつ、国内関連会社のみと関連取引が発生する場合。
(2)限定された機能およびリスクを負担する企業とは
今回の通知で明示されていないため、現段階では下記の通知を参照することになるかと思われます。
『特別納税調整実施弁法(試行)』(国税発[2009]2号)39条 より
『関連者の注文書に従って加工製造を行い、経営の意思決定、製品の研究開発、販売等の機能を担わない企業は、意思決定の誤り、操業度の不足、製品の滞留等を原因とするリスク及び損失も負うべきではなく、通常一定の利益率を維持しなければならない。』
『単一生産機能のみを有する外商投資企業と外国企業の納税状況の調査に関する通知』
(国税函[2007]236号 より
『外商投資企業は国外親会社の全体経営計画に基づき製品注文書に従い、製品の加工製造に従事し単一の生産機能のみを有し、経営政策の決定、製品の研究開発、販売等の機能をすべて国外親会社及びその他の関連会社が担当する。これらの企業が経営政策の決定、市場開拓、販売等の機能を有しないため、グループ企業の経営政策決定の誤り、稼動不足、製品販売不振等により生じたリスク及び損失を負担すべきでない。』
今後の通知等に注意する必要がありますが、中国の税務当局は、通常外商投資企業は限定された機能およびリスクしか負担していないと考えていますので、赤字になった場合は、文書化の準備を行っておく方が望ましいと考えます。限定された機能およびリスクではないと判断して同時文書を作成しない場合でも、商流分析、機能リスク分析、比較可能情報の検索など基本的な移転価格スタディを行うことをお奨めします。