【2022年3月】市場主体登記管理条例が2022年3月1日から施行

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2021727日付け公布の「市場主体登記管理条例」(国務院令第746号、以下“同登記管理条例”と表記)[i]202231日より施行されます。同登記管理条例は、企業やパートナーシップなど各種の法人格を有する企業主体や個人を包括的に含む“市場主体”の登記事項に関する各種規定を統合[ii]すると共に、休眠制度の導入や簡易抹消制度等を規定しています。

現在も、コロナ禍による市場環境の悪影響や中国企業の競争力の更なる向上等を背景に、中国市場からの撤退や縮小を検討される企業も一定数、見受けられており、休眠制度の創設や簡易抹消制度の整備が進む状況は、当該現地法人を有する日本本社にとって検討に値すると考えられます。
 この為、本稿では、同登記管理条例の趣旨等や、休眠制度、簡易抹消制度を中心に取り上げ、説明します。

 

【市場主体の対象】

Ø 会社・非会社企業法人及び同分支機構

Ø 個人独資企業・パートナーシップ企業
及び同分支機構

Ø 農民専業合作社及び同分支機構

Ø 個人事業主

Ø 外国会社の分支機構等

1.    同登記管理条例の制定趣旨、適用対象と要登記・届出事項

 “放管服”とよばれる行政の簡素化・デジタル化を含む効率化が進む中、同登記管理条例の制定趣旨は、登記制度の統合や更なる整備にあります。この為、同登記管理条例では、まず適用対象となる“市場主体” (右表参照)を、“営利を目的として経営活動に従事する自然人・法人及び非法人組織”と包括的に定義しています。

 

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また、登記関連事項についても、以下の一般登記事項定に加え、更に市場主体の類型に応じた届出事項を定めています。

 

2.    休眠制度

中国では所謂“休眠”制度はなく、実質的に営業停止をしても当該期間には月次納税(ゼロ申告)や企業所得税の確定申告、各種行政機関への年度報告[iii]等を実施する必要があります。この為、同登記管理条例における“休眠”制度の記載は注目に値します。

 

Ø  自然災害・事故災難・公共衛生事件・社会安全事件等による経営上の困難に対して、一定期間の休業を自ら決定が可能

Ø  休業前に従業員と労働関係処理などの関連事項を協議しなければならない

Ø  市場主体は、休業前に登記機関に備案しなければならない

また、休眠期間は最長3 年とする一方で、休業期間では法的書類の送付・受取先を住所或いは主要経営場所に代替できる為、テナント賃料の回避も実質的に可能となります[iv]

但し、上記の適用要件の通り、単なる経営の不振や業績の悪化では休業が認められません。また、労働契約の解除や、変更では休眠期間中の給与や社会保険料の取扱い等、従業員と各種の労務関連事項での協議を要するなど、休業を可能とする為のハードルは相応に高いと考えます[v]

 

3.    企業登記の簡易抹消制度

201731日より、「企業簡易抹消登記改革の全面促進に関する国家工商管理総局の指導意見」(工商企注字「2016253号)による中国全土への拡大施行以降、関連規定が続々と施行され、実務的にも当該制度の適用を受けた、短期間での現地法人の清算事例も既に見受けられます。
同登記管理条例においても、以下の要件を充足すれば、企業登記の簡易抹消が可能と明記されています。

Ø  債権・債務の返済を完了済

Ø  返済費用・従業員の賃金・社会保険料・法定の補償金・納付すべき税金(滞納金・罰金)が未発生或いは清算済

Ø  全投資家が上述の状況の真実性に対して法的責任を負う

同登記管理条例では、上記を充足する場合、承諾書及び抹消登記申請書を、国家企業信用情報公示システムを通じて公示します。当該公示期間も、従来の45日間から20 日間と一段と短縮されました。

(尚、20211229日付け5部門連名公布「企業抹消ガイドライン(以下“ガイドライン2021年改正”)」[vi]
では、税務登記の簡易抹消等も含め、登記の抹消について詳細に規定されており、併せてご参照ください。)

 

4.      留意事項

繰り返しになりますが、休眠制度の適用には相応のハードルが設定されており、同登記管理条例の施行後も、安易に休眠ができない状況に変化のない点には注意が必要です。更に、例えば従業員との“協議”は、“合意”まで求められるのか等の実務運用や、手続き詳細を含む今後の補充規定の注視が必要です。
一方、簡易抹消制度は既に実務的にも活用され清算期間の短縮化が図られており、今後、同登記管理条例やガイドライン2021年改正等や実務運用も含めたより一層の整備・効率化が期待されます。但し、上記の要件に加えて、ガイドライン2021年改正では依然、外商投資市場参入ネガティブリスト項目の企業では簡易抹消制度が適用できないなど、簡易抹消制度には一定の制限が留保されています。また実務的に見た場合、現地法人の清算時には簡易抹消制度の適用要件を満たす事例はまだ少なく、多くの現地法人では、清算時、労務関連の適正処理や税務登記の抹消が依然として、重要ポイントにある点にも留意が必要です。
従い、現地法人の休眠化・撤退の検討や方法は諸要素からの分析が必要と共に、経験豊富な専門家に相談・依頼するなどの選択肢も含め、慎重に対応すべきものと考えます。

 


[ii] 「会社登記管理条例」、「企業法人登記管理条例」、「パートナーシップ企業登記管理弁法」、「農民専業合作社登記管理条例」、「企業法人法定代表人登記管理規定」は同登記管理条例の施行により廃止される。

[iii] 年度報告を実施しない場合の罰則例として、市場監督管理部門の“ブラックリスト(経営異常リスト)”への公示や、深刻な場合は行政処罰等が挙げられる。企業信息公示暫定条例の原文URL: http://www.gov.cn/zhengce/2014-08/23/content_2739774.htm

尚、日本の“休眠”においても確定申告の必要性や納税義務の生じる可能性等、一定の留意が必要。

[iv] 但し、登録住所の確保が前提であり、最低限度の費用が生じる点に留意が必要。

[v] また、「税務登記管理弁法」等に基づけば業務停止の登記(“停業登記”)をしない限り、引続き、月次納税等が必要と考えられる。

[vi] 原文URLは右記の通り。URLhttp://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n362/c5171962/content.html 

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