中国では最も深刻な感染状況が見られた武漢でも都市封鎖の解除、事業の再開など新型コロナウィルス(Covid-19)の感染状況が抑制傾向にあり、緊急事態宣言下の日本とは対照的な状況にあります。一方、日中双方で海外からの感染流入を抑止すべく入国後の隔離・待機期間を設定していますが、中国では更に感染の再拡大を予防すべく、ビザの取扱いが厳格化されています。また、居留期限経過後の緩和措置も期限が到来するなどもあり、本稿では駐在員の再入国の取扱いを始めとした、ビザや工作・居留許可証の更新に係る最新情報や留意点を解説します。
(1)駐在員の再入国にかかるビザの取扱い:
外交部、国家移民管理局より「有効な中国ビザ、居留許可を有する外国人の入国の暫定的停止に関する公告」(以下“暫定的停止に係る公告”と表記)[i]が公布され、以下の政策が採られており、注意が必要です。
Ø 2020年3月28日から現在有効なビザと居住許可を有する外国人の中国への入国を暫定的に停止 Ø APECビジネストラベルカードを所持する外国人の入国も暫定的に停止 Ø ポートビザや24/72/144時間のトランジットビザ免除等も暫定的に停止 Ø 但し、外交、公式、礼遇、Cビザでの入国には影響しない Ø 必要な経済や貿易、科学技術活動の従事、および緊急的な人道的ニーズのため中国に入国する外交官は中国の大使館および領事館にビザ申請が可能。 Ø (本公告の)公布後に発給されたビザを所持する外国人の入国には影響しない |
但し、下述の「(3)日本の中国ビザ申請サービスセンタ-での取扱い」の通り、現在、日本におけるビザの発給業務は実質的に停止されており、現時点では新規ビザの発給再開時期が不透明である点に留意が必要です。
尚、香港など現在業務中のビザセンター[ii]にて、同公告後に無犯罪証明や学位証明書などを要しない“簡便的なZビザ”[iii]の発給を受け、中国に再入国した駐在員の事例を確認しているものの、実務運用時には現地での事前確認を行うなど、慎重な対応が望ましいものと考えられます。
(2)在中国人員にかかるビザ、工作許可証・居留許可証の取扱い:
前々号、前号のJPマイツ通信[iv]の通り、工作許可証は“期限到来直前でのオンラインでの更新手続きが可能”との、「外国人来華工作許可の許可延長申請期限の暫定的取消に関する通知」[v]は現時点でも有効な状況です。
一方、居留許可証も、国務院が3月1日開催のプレス・カンファレンス上で“在中の外国人の居留期限が到来した場合、自動的に2か月間延長が可能であり、合法的な滞在若しくは通常の出国ができる”との緩和措置を公表[vi]しましたが、その前提は“中国内にいる”外国人を対象であると共に、5月月初に2か月間の延長期間が到来します。
本稿執筆時点[vii]では同措置の再延長等は公表されていない為、居留許可証を未更新であれば至急、その延長手続きにつき関連当局に照会、連携を図ることが望ましいと考えられます。
また、Mビザなど出張ベースでの滞在中に当該緩和措置を享受している等の状況下では
、当該措置の延長など何らの措置も図られない場合、規定上は不法滞在のステータスとなります。引き続き、何らかの救済措置の公表・公布の可能が期待される為、最新動向を注視すると共に、同措置の終了後には不法滞在リスクが生じる点にも、注意が必要です(過去の不法滞在に係る罰則等に関して、上海マイツ通信、JPマイツ通信を参照願います[viii])。
(3)日本の中国ビザ申請サービスセンタ-での取扱い:
新規の赴任者、或いは日本に一時帰国中に工作許可証の更新や上述の“簡便的なZビザ”取得を行わず、中国での合法的な就業ステータスを失効した場合に関しては、原則、Zビザの新規取得が必要となります。
しかし、4月7日発令の7都府県に対する緊急事態宣言を受けて、ビザ申請及び書類認証の窓口機関である中国ビザ申請サービスセンタ-(以下“ビザセンター”と表記)の全拠点(東京・大阪・名古屋)が、一時的に業務を停止しており、現時点でのビザ申請・書類認証(一部ビザの申請書類に必要)は、以下に列挙する特別な事情がある場合に限定されています[ix]。
(以下における)緊急的な需要がある場合 Ø 重要な貿易、技術方面 Ø 又は特別な事情のある人道的方面 |
上述(1)の「暫定的停止に係る公告」で要求される“必要な活動”と比して、現況下での“重要な貿易、技術方面”等のハードルは高く、通常の技術指導や管理業務では認められない可能性が高いと考えられます。実務的にも、駐在員や出張者に対しては、現状、新規のビザ発給業務が実質的に停止となっている状態です。
併せて、一時的な業務停止の理由に、緊急事態宣言や密集状況の回避を挙げている為、同宣言期間の5月6日までは停止状態の継続が予想され、今後の日本での新型コロナウィルス流行状況次第では以降の業務停止が継続される可能性もあります。
従いまして、ビザ・居留許可証が失効して一旦日本に帰国した場合、或いは一時帰国中の駐在員にとって、現況下で再入国が可能となる時期は不透明な状況です[x]。よって、現地での最新動向を注視しつつ、在中の駐在員が特に合法的なステータスを有している場合、従前よりもより慎重に出国時期を判断すべきとも考えられ、注意が必要です。
[i] 本公告の原文は下記URLの通り。
URL:http://fwp.safea.gov.cn/lhCmsArticleDisController.do?cmsArticleContentPage&artId=bb7f31eb710c1fe0017119f2344a0400
[ii] 香港の中国ビザ申請サービスセンタ-のURLは右記の通り。
[iii] “簡便的なZビザ”の発給要件は、JPマイツ通信3月号及び4月号をご参照願いたい。
[iv] JPマイツ通信及び後述の上海マイツ通信を含む、過去のニュースレター(各マイツ通信ほか)は下記URLの通り。
[v] 本通知の原文は下記URLの通り。
[vi] 公表内容の詳細は右記URLの通り。
[vii] 2020年4月20日時点の情報に基づき執筆。
[viii] 過去ニュースレター(各マイツ通信ほか)は右記URLを参照のこと。URL:https://myts.co.jpcategory/newsletter/
[ix] (東京)ビザセンターのURLは右記の通り。
[x] 但し、工作許可証の失効していない駐在員については、第三国から“簡便的なZビザ”の発給を受け再入国するとの可能性は残されているが、上述の通り、実務運用時には事前確認など慎重な対応が望ましいと考えられる。