【2020年4月】新型コロナウィルスの拡大を受けた 日本本社の資金繰り支援、ビザ、現地労務対応

rogo_JPマイツ通信20200630.png

マイツ通信20200702_2.png

本稿執筆時点[i]において、日本国内や北米・EUを始め広範囲での拡大傾向が顕著な状況とは対照的に、中国では武漢での新たな感染者がゼロになるなど新型コロナウィルス(Covid-19)の感染拡大が抑制傾向にあり、業務再開の本格化に向け、動きつつあります。その一方で、現地の操業規模の縮小や従業員の自宅待機、販売の減少等に起因する、現地法人の資金繰り支援や現地スタッフの減給可否・方法など各種のお問い合わせが当室にも寄せられています。 この為、本稿では前月号のJPマイツ通信[ii]に続き、以下の“1.日本本社の資金調達支援”や“2.現地法人の労務関連”、“3.ビザ、工作・居留許可証の更新”にかかるアップデート情報や留意点を解説します。 

1.    日本本社の資金調達支援(投注差方式の外債枠取消の実務運用、マクロプルーデンス方式の規制緩和)

(1)投注差方式における外債登記枠の取消にかかる実務運用状況のアップデート:

前月号の通り、資金繰り支援に関しては、現地法人の海外からの調達方法の主流である投注差方式において、外債登記枠(投注差)の上限を暫定的に取消しする匯綜発20202号が施行されています[iii]
 しかし、実務運用では一部地域ではコロナ防疫関連企業でなければ許可が下りないとの情報(一部金融機関へのヒヤリング)に加え、当室でも防疫関連を資金使途としない申請が却下された事例を確認済しており、当該通知による資金調達は、実務的にはかなり限定的と考えられます。この為、実務的には日本本社の資金繰り支援は、外債登記枠内での親子ローン等による融資、また外債登記枠がなければ増資の検討が主体と考えられます。

(2) マクロプルーデンス政策因数の増値による外債枠の拡大:

また、一部の現地法人は上記の投注差方式では無く、マクロプルーデンス方式、すなわち純資産額をベースに外債枠を算出する方式を採用しています。今般、3 11日付「全範囲クロスボーダー融資のマクロプルーデンス政策因数の調整に関する通知」(銀発[2020]64 号)[iv]が公布・施行され、マクロプルーデンス政策因数が1.00 から 1.25 に引上げされました。これにより、以下算式の通り、同方式の外債枠(クロスボーダー融資リスク加重残高上限)が純資産の 2.0 倍から 2.5 倍に拡大され、現地法人の海外からの資金調達可能枠が増加しています。

【外債枠(=クロスボーダー融資リスク加重残高上限)の計算方法)】

(計算式) 企業[i]の外債枠=純資産額×レバレッジ率×マクロプルーデンス政策因数  

変更前(純資産を100と仮定)

=  100 ×   2.0   ×     1.00   =2.00   =200

変更後(    〃    )

=  100</ span> ×   2.0   ×     1.25   (=2.50)   250[ii]

2.    現地法人の労務対応 

前月号の通り、人社庁発明電[20205[vii]では業務停止期間中の従業員に支払うべき賃金等を定めています。すなわち、企業が感染拡大の影響を受け生産経営が困難な場合、従業員との協議一致を経て賃金調整、シフト勤務、勤務時間短縮等の方式を採用できます。また生産経営停止が一賃金支給周期を超える場合、必ずしも通常の労働契約の基準で賃金を支給する必要はありません[viii]
 但し、この支給賃金額の変更は労働契約法[ix](第4条)にて規定する“従業員の切実な利益の変更”に該当し、同条規定のプロセスに準じて、(人員削減や清算を回避すべく)当該賃金調整の必要性を説明し、従業員との協議、合意形成後の実施が望ましいものと考えられ、特に現況下では日本本社や専門家等を含めた適切なサポートが求められるものと思われます。                      

3.    ビザ、工作・居留許可証の更新

工作許可証及び居留許可証の期限が至近の外国籍人員の取扱いに関しては、以下の通りです。

工作許可証:前月号の通り、「外国人来華工作許可の許可延長申請期限の暫定的取消に関する通知」の緩和措置により、“同許可証期限の30日以前に延長手続きを行う”との制限が暫定的に取消され、期限到来直前でのオンライン申請が可能です。駐在員の再入国に際し、新規にビザを取得しない限り工作許可証の期限到来前の当該手続が必須であり、更新手続き未済の駐在員を有する企業は至急の対応が必要です。

居留許可証:国務院は31日開催のプレス・カンファレンス上で居留許可証更新に関し、“在中の外国人の居留期限が到来した場合、自動的に2か月間延長が可能であり、合法的な滞在若しくは通常の出国ができる”との緩和措置を公表[x]しましたが、その前提は“中国国内にいる”外国人が対象であり注意を要します。
 従って、一時帰国中の(期限至近の)駐在員に関しては工作許可証の更新後、ビザセンター等での簡便的な”Zビザ“(或いはLビザ、Mビザ)の取得が必要です[xi]が、ビザセンターHP等に記載の通り[xii]ビザの審査、発給には通常よりも所要時間を要する旨にも、留意が必要です。

今後も状況の変化と共に、各所管部門から様々な制限策/緩和策/支援策等の公布が予想されます。日本本社としてもこれらの情報を適時に現地法人に提供すると共に、上記の論点に加えて、駐在員や現地スタッフの保護や処置、生産・経営への影響の最少化など、引き続き、通常時以上のサポートや判断が必要と考えられます。


[i] 本稿は2020323日時点の情報を基に作成。

[ii] JPマイツ通信20203月号「新型コロナウィルスの拡大による各種重要規定の公布」(労務に関する規定、工作許可証の更新期限にかかる緩和措置、外債登記枠の取消)は右記URLの通り。URL: https://myts.co.jp/newsletter/2020/03/10077/

[iii] 外債登記の概要、及び匯綜発「20202号の詳細は、前月号を参照願いたい。

[iv] 銀発[2020]64 号の原文は右記URLの通り。URL: http://www.safe.gov.cn/safe/2020/0312/15681.html

[v] 金融機関(非銀行金融機関、銀行類金融機関)の外債枠(=クロスボーダー融資リスク加重残高上限)は企業とは異なっている。詳細は銀発[2017]9 号及び銀発[2020]64 号を参照願いたい。銀発[2017]9 号の原文は以下URLの通り。  

URL:http://www.pbc.gov.cn/WZWSREL3poZW5nd3Vnb25na2FpLzEyNzkyNC8xMjgwMzgvMTI4MTA5L

zMyNDEzMTAvaW5kZXguaHRtbA==?wzwschallenge=V1pXU19DT05GSVJNX1BSRUZJWF9MQUJFTDQ0MzcxOTI=

[vi] 尚、投注差方式では外債金額=外債登記の費消枠(但し、短期外債金額は返済後に枠が復活)となるが、マクロプルーデンス方式では“期間リスク転換因数”、“類別リスク転換因数”、“為替リスク転換因数”により外債の費消金額を算出し、現状では長期クロスボーダー人民元建て借入以外は、外債の費消金額>外債金額となっている旨、留意が必要。

[viii]人社庁発明電[20205号の詳細は、前月号を参照願いたい。

[ix] 労働契約法の原文は以下URLの通り。URL:http://www.npc.gov.cn/npc/c198/200706/d0fdd4a090ce46e3b3a8b26f45222039.shtml

[x] 公表内容の詳細は右記URLの通り。URL:http://www.gov.cn/xinwen/2020-03/01/content_5485417.htm 

[xi] 工作許可証更新の具体的方法及び居留許可証更新の為の簡便的な“Zビザ”の取得手続き方法等は前月号を参照願いたい。 

[xii] (東京)ビザセンター“当面中国行ビザ申請についてのご説明”は以下URLの通り。

URLhttps://bio.visaforchina.org/TYO2_JP/generalinformation/news/283418.shtml