【2016年3月】コラム第13回 中小企業で果たすべきCFO業務

2016.03.01

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営業企画部 片瀬陽平

コラム第13回目

 前回、海外子会社の不正のお話を記載させて頂きましたが、反響があったために今回も引き続き、海外子会社の不正の方法を紹介いたします。循環取引など海外子会社が組織的に大がかりな不正をしていた場合には、その影響を日本本社
が受けることにもなりかねませんので、子会社の管理は親会社の責務ともいえると思います。
大がかりな不正は、現地人を現地法人の代表にしている場合に起きる可能性があります。日本人が行う不正は粉飾決算など親会社への報告内容をよりよくするための不正が多く、現地人が行う不正は自身の金銭的利益のため、日本人が行う
不正は自身の保身のためと不正にも傾向がありますので、自社の実態に即した対策を立てるようにしてもらえればと思います。

 まず前回の復習として、不正の種類について改めて確認してみましょう。
①財務報告の不正
→資産負債の過大又は過少計上、隠ぺい、改ざん
②資産不正
→現金・在庫・固定資産の窃盗、経費の不正支出
③汚職
→利益相反行為、利益供与、賄賂、販売購買に伴うキックバック

  この中で日本人の不正は①に偏る傾向があり、現地人の不正は②③が比較的多い傾向があります。前回は簿外処理についてお伝えさせて頂きましたが、今回は摘発件数が多い現地従業員の不正について実例をもとに説明させて頂きます。

 <現地財務担当者の不正(中国の場合)>
中国子会社A社の現地人財務担当者aは数年前に日系企業現地法人に会計財務担当者として採用され、会計及び入出金の管理を行っていた。日本本社は現地
のことは現地に任せる(総経理:中国人)という考え方から、法定監査について
中国人総経理に任せ、現地格安会計事務所において監査を行っていた。
設立10年を経過し業績も順調であったが、日本で中国の不正のニュースなどを度々目にするようになったため、一度、業務実態調査を行い中国法人の実態を把握しようと日本親会社は日系の会計事務所に業務実態調査を発注した。
業務実態調査により預金通帳を確認していたところ、次のような不可解な入出金が繰り返されていた。

<入出金(例)>
1月5日 出金 200万元
1月29日 入金 200万元
2月5日 出金 200万元
2月25日 入金 200万元

 親会社はもちろんこの事実を知らず、会計事務所の担当者と親会社の担当者とともに現地財務担当者に厳しく問い詰めたところ、個人の利益のために次のようなスキームで不正を繰り返していたことを自白。そのスキームとは、財務担当者の個人口座に上記200万元を入金し、その200万元で短期理財商品を運用するというものであり、毎月数万元単位で利益を計上していたとのこと(中国では金利5%を超え
る理財商品も多数)。

 会計上は、月初の出金時に現金からその他未収入金に振替え、月末の入金時にその他未収入金を現金に振戻す処理を行っていたために、親会社は毎月送られてくる財務諸表ではこの事実をつかむことはできなかったようです。

 この不正のポイントは以下の点が挙げられます。これらのポイントをしっかりと押さえて海外での不正が起こらない体制を作ることが重要です。

<ポイント>
①会計担当者と財務担当者は同一人物になっていないか。
②出納管理規程は整備されているか。
③現金預金の明細は毎月確認しているか。
④監査での確認は残高確認だけではなく、推移も確認しているか。
⑤会計担当者、財務担当者が身に余るブランド品や車などを購入していないか。

 我々のクライアントにおいても中国やインドネシア、タイ、ベトナムなどにおいて、業務の実態調査を行ってほしい旨の要望がここ最近多くなってきており(循環取引などで大きな問題となる日系企業がここ数年増えているため)、その要望に応えるためにASEAN各国にて不正調査や業務実態調査、内部統制調査などの業務を行っています。

 4月21日(木)には不正セミナーを改めて行うことを計画(今回は会計、法務、システムの3つの視点から不正を紐解く)していますので、ご興味のある方はマイツグループHPより3月頃に掲載されるセミナー情報をご確認ください。