【2018年4月】罰金的な賃金控除の危険性

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中国の日系企業の就業規則では 「1時間以上遅刻した場合は一日分の賃金を控除する」等の規定をよく見かけます。

実はこのような罰金的な賃金控除は中国では禁止されています。この種の規定の適用により起きた残念な事例をご紹介いたします。

【事例】

張さんは2008年10月8日に三豊公司(以下、単に「公司」と言います)に入社しました。

張さんは2013年8月20日、同年8月21日、同年8月23日、いずれも事前に会社に「社会保険や個人所得税の確認のために役所に行く」という理由で欠勤許可申請を行いました。しかし、公司はこれを許可せず、無断欠勤と扱いました(どうやら背景には社会保険や積立金についての紛争があったようです)。

就業規則には「1日無断欠勤を行った場合は2日間分の賃金を欠勤控除する」との規定があり、公司はその規定に基づいて2013年8月分の賃金から6日分の賃金を欠勤控除しました。

張さんは、これを不服として、2013年10月8日、労働契約解除通知を出しました(要は退職をしました)。

その上で、張さんは、実際の欠勤控除額と本来の欠勤控除額との差額分の賃金と経済補償金の支払いを求め、労働仲裁に申し立てました。中国労働契約法第38条1項2号、第46条1号により、賃金未払いの場合は従業員から労働契約を解除することができ、かつ経済補償金を請求できるためです。

【判断】

労働仲裁、一審、二審も会社の敗訴となり、差額分の賃金と経済補償金の支払いを公司に命じました。

中国労働契約法第三十条では、「使用者は労働契約の約定及び国の規定に基づき、労働
者に期限どおりに満額の労働報酬を支給しなければならない」と定めており、この規定は実際の欠勤や遅刻以上の賃金を控除することを禁止しているものと解釈されており、中国では実際の欠勤以上の控除は禁止されているからです。

そのため、公司は全面敗訴となりました。 

【対策】

仮に罰金的な賃金控除の条項がありましたら、なるべく早期に改定する必要があります。

この事例の様に単なる無断欠勤ではなくて、欠勤を許可しない事例(病気休暇の紛争等)も出てくる場合に人事担当者は就業規則のとおりに賃金控除をしてしまう可能性があり、意図せぬ経済補償金が発生してしまう可能性があるからです。

今すぐ改定ができないとしても運用については気をつける必要があり、時には就業規則通りに運用しない扱いも必要となります。