【2016年11月】「1時間遅刻すると、1日の給与を控除」は合法か?

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 弊社では日系企業を対象に、「就業規則の無料の簡易レビュー」を提供し、就業規則の違法点や運用しにくい点を指摘させていただいています。それらを通じて、多くの日系企業の就業規則には以下のような条文が散見されました。

●「1日無断欠勤すれば、3日分の給与を控除する」

●「3回遅刻すれば、1日分の給与を控除する」

●「2時間以上遅刻すれば、1日無断欠勤と見做す」

●「遅刻は30分を単位とし、給与を控除する」 など

 これらの規定は時間感覚のない従業員に経済的処罰を与えることによって、会社の労働規律の徹底、生産現場の安定性等に貢献しています。しかし、コンプライアンスの観点から、上記規定は中国労働関連法律に抵触する可能性があります。

実は、中国の法律には従業員が遅刻した場合の給与控除について、明確に規定されていません。「上海市企業給与支給弁法」第二十五条では、「企業と従業員代表は本弁法の
原則に基づき、給与に関して集団協議などの民主的管理プロセスを経て、本企業の給与支給弁法を規定し、全従業委員に通知することができる。」と定め、欠勤時の給与控除方
法は社内で定め、従業員のサインがあれば、合法だとの認識が普及していました。特に、数十年前の計画経済の時代、ほとんどの国有企業は、「1日無断欠勤すれば、3日分の給
与を控除する」のような給与控除制度を制定し、合法とされていました。このため、従業員が会社のルールに違反すれば、懲戒的な給与控除をされることが当たり前だったの
です。

 しかし、2008年に労働契約法が制定されてから、従業員の給与はあくまでも会社と約定するもので、会社は一方的に減給することが出来なくなってきました。就業規則に明
記し、従業員のサインがあっても、合理的範囲外の給与控除は違法と判断される判例が増えました。会社が欠勤時間分を超えて控除した金額を従業員に返済した上で、「約束
の期日に給与を全額支給していない」ことを理由とし、さらに控除金額相当の弁償を要求されています。

 

 では、従業員が欠勤した場合の正当な給与控除額はいくらでしょうか?中国労働法の「NO WORK、NO PAY」の原則に従い、欠勤時間分の給与を控除することが
合法です。会社の管理上の必要性を考え、明確な規定を作成し、従業員の同意があれば、「遅
刻時間が2時間未満の場合、30分を単位で欠勤時間分の給与を控除」や「遅刻2時間以上4時間未満は半日給与を控除、遅刻4時間以上の場合、1日給与を控除」は合法です。ただし、「1日無断欠勤すれば、3日分の給与を控除する」や「3回遅刻すれば、1日分の給与を控除する」などの、懲戒的な性質を持つ処理方法は違法とされる可能性が高いです。


従業員の遅刻、欠勤行為を防ぐためには、給与控除以外に、賞与制度や懲戒処分制度を合わせて利用することが有効です。貴社の関連規定に違法リスクがあるかどうか、一度弊社の無料簡易レビューを受けられてはいかがでしょうか。