【2020年12月】Withコロナ下の中国子会社管理 2021年1月より中国初の民法典が施行

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202111日より「民法典」(主席令第45号)[i]が施行されます。民法典は、全7編・1260条から構成され、これまで「契約法」(主席令第15)[ii]、「担保法」(主席令50号)[iii]など個別に制定されていた民事関連法規範が集約されると共に、知的財産権や個人情報の保護など昨今の変化にも対応すべく、約4年の年月を掛けて民法典として編纂されました。更に民法典は単なる個別法の集約・編纂に止まらず、従来法の規定内容にも重要な変更が加えられています。例えば、契約書の約款内容や保証の定義などが挙げられ、今後、現地法人の契約内容や商行為等への影響も考え得る為、現地法人は勿論、日本本社としてもその概要を把握する必要があると考えられます。詳細は以下の通りです。

 

■民法典の枠組み                                                                                            

従来、中国では民法を含む私法の分野において、一般法は特段には存在せず、民法通則、民法総則、契約法、物権法など個別の法律規定が制定されていました。今回、民法典の施行より、主要な民事関連法は以下の枠組みに変化し、現行の上述を含む9規定は民法典の施行と共に廃止されます。

【主要な民事関連法における枠組みの変化】

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重要な変更点

まず、単純な要変更事項としては、従来の契約書上に“(中華人民共和国)契約法等の関連法律法規に基づき・・・”等と謳っている場合、“(同)民法典等の…”へと変更する必要があります。
 更に、民法典では現地法人の契約内容や商行為等への影響も生じ得るような従来の個別法から重要な変更が加えられており、本稿でもその一部を以下に列挙します。

(1)    連帯保証VS一般保証
民法典(第686条)では、”保証契約において、保証方式に約定がない場合、或いは約定が明確ではない場合、当事者は一般保証に従い保証責任を負う“と定めています。一方、従来の担保法(第19条)では、このような場合には連帯保証を指すと定められており[iv]、従来とは相反する条項内容へと変更されています。

(2)    フォーマット契約の取り決め
B to C
での取引等では“フォーマット契約(中国語:格式条款)”と呼ばれる、定型的な約定・約款を用いる例も多く見受けられます。従来の「契約法」(第39条)においても、フォーマット契約上の免責・制限条項に対しては書式提供者側、即ち企業側に注意喚起・説明義務を課していました[v]が、民法典(496条)では“当該契約条項の説明義務等に対し、相手方(即ち利用者)が重要な利害関係を有する約款に注意を払わない或いは理解しなかった場合、当該約款の不成立を主張できる”旨の、利用者側の保護強化が図られており、注意が必要です。

(3)    知的財産権保護の強化
民法典において知的財産権の関連条項は52条にも上るとされ[vi]、「故意に他人の知的財産権を侵害し、情況が重大である場合、権利侵害を受けた者は相応の懲罰的賠償請求の権利を有する」(1185条)と“懲罰的賠償請求権”が明文化されています。更に「商標法」(主席令第6号)等では当該適用要件に侵害行為に“悪意”を有するとの挙証が必要でした[vii]が、民法典では、上記の通り、“悪意”から “故意”の有無に変更されています。

これらに加えて、第4編「人格権」では生命権、身体権、健康権、氏名権、名称権、肖像権、名誉権、栄誉権、プライバシー権と共に、個人情報保護が定められインターネットを始めとする情報技術の発展に即し改変されています。

■留意事項

特徴としては、民法典の多くは現行の個別法を踏襲し整理統合したものですが、上述の変更事項は一部に過ぎず、第3編「契約」を始めとした各種の改正事項に合致するよう、適宜、従前の契約書内容に対するレビュー等の検討が必要と考えられます。また、民法典施行後には実務運用にも留意する必要があるでしょう。民法典は上述の通り、1260もの条項から構成されていることから、現地法人の対応任せにせず、必要に応じて外部専門家のサポートを受けると共に、日本本社も契約書レビューを始めとした各種のサポートを行うことがより望ましいものと考えます。


[i] 民法典の原文は下記URLを参照のこと。

 URLhttp://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202006/75ba6483b8344591abd07917e1d25cc8.shtml

[ii] 契約法の原文は下記URLを参照のこと。

 URL http://www.npc.gov.cn/zgrdw/npc/lfzt/rlyw/2016-07/01/content_1992739.htm

[iii] 担保法の原文は下記URLを参照のこと。

 URLhttp://www.npc.gov.cn/wxzl/gongbao/1995-06/30/content_1480123.htm

[iv] 担保法(第19条)原文に“当事人对保证方式没有约定或者约定不明确的,按照连带责任保证承担保证责任”と定められている。

[v] 39条:采用格式条款订立合同的,提供格式条款的一方应当遵循公平原则确定当事人之间的权利和义务,并采取合理的方式提请对方注意免除或者限制其责任的条款,按照对方的要求,对该条款予以说明。後略)。

[vi] 下記URL記載の「《民法典》正式诞生!7编1260条,知识产权相关规定共52条」(中国国際貿易促進委員会HP)より抜粋。

 URLhttp://www.ccpit.org/Contents/Channel_3586/2020/0529/1263774/content_1263774.htm

[vii] 「商標法(2019年改正)」(第63条)を参照のこと。

URL http://ip.people.com.cn/n1/2019/1106/c179663-31440313.html

 

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