[2015年9月]コラム第7回 中小企業で果たすべきCFO業務

2015.09.01

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営業企画部 片瀬陽平

 

コラム第7回目

 

 

さて、今回はCFOが行うべき企業価値の増大について執筆します。競争戦略
については企業価値の増大に紐付けてこそ真価を発揮するものですので、企
業価値の増大の基本的な考えからまずは執筆していきます。


 

公開会社であれば企業価値は、発行済株式数×株価で表されるのが一般的
であり、株価の上昇が企業価値の増大と考えられています。株価には純資産
価値及び該当する会社に対する期待価値が含まれ(さらに掘り下げると財務
的価値には収益力や配当、非財務的価値には技術力や経営者、従業員など
に分けられるのですが、ここでは便宜的に財務的価値を純資産価値、非財務
的価値を期待価値としています)、これらの価値を増大させることがCFOの
果たすべき機能とされています。

 

 

ただし、このコラムのテーマはあくまでも「中小企業で果たすべきCFO業務」
としていますので、公開会社の企業価値には触れずに中小企業(非公開会
社)の企業価値について書こうと思います(基本的な企業価値の考え方は同
様です)。

 

 

中小企業は一般的に常に企業価値を把握しているわけではありません。中小
企業が企業価値を把握するタイミングとしては、合併、M&A、分割、譲渡な
どの組織再編時、また相続、贈与などによる税額計算時に企業価値を把握
する
こととなります。ただし、多くの中小企業から直に話を聞いても、組織
再編や贈与などを行った一時点における企業価値しか把握しておらず企業価
値を増大させるための方策を取られている中小企業は正直多くはありませ
ん。

 

 

中小企業が作成する決算書はあくまでも税金計算用の資料であり、それがそ
のまま企業の意思決定に資する情報とはならない点を理解しておく必要があ
ります。特に固定資産の時価、将来の収益力、業界に対する期待値等を織り
込めない点等が問題となります。

 

 

これらの問題点となる項目を織り込むために、企業価値の評価を行う方法は
大きく分けて下記の5つが存在します。

 

【企業価値の評価方法】

①市価方式
 ※市価方式とは公開会社の取引所価格を主に用いますので、今回は割愛
  します。

②純資産方式

③収益還元価値方式

④類似業種(会社)比準方式

⑤併用方式

②の純資産方式とは固定資産の含み益を考慮するなど、現在の会社の客観的
な時価を表すことができます。
③の収益還元価値方式とは将来の収益力を現在の価値に割り引いて会社の価
値を算定するために今後も成長を続ける継続企業を評価することに役立ちま
す。
④の類似業種(会社)比準方式とは類似する業種の平均株価と比較する方法で
あり、業界に対する期待価値も含めて評価することができます。
⑤の併用方式とはストックとフローのバランスを見ながら上記の方法を平均
(基本的には加重平均)するために該当する企業に合わせてカスタマイズす
ることができます(ただし、税金計算の観点からは客観性に欠ける部分があ
る)。

 

 

 

CFOが意思決定に利用する方式は一概にどれということは言えませんが、こ
れらの方法によって評価された企業価値は、単なる税金計算用の決算書とは
目的がかなり違うことを理解していただければ良いかと思います。
例えば、不動産の売却の意思決定をする場合に、現在の不動産の客観的な時
価を時価純資産方式(固定資産評価額等を利用した場合には、客観的な時価
と言いづらい側面もありますが・・・・)により算定し、将来の収益力を収
益還元価値方式(これもDCFを使わず単純還元であれば客観性に欠けます
が・・・)により算定します。不動産の売却時価と収益還元価値を比較して、
売却時価が過大であれば売却の意思決定をし、過少であれば利用し続け
る意思決定をすれば良いのです。

 

 

 

企業価値の最大化は、このような資産負債の再配置を行うことでも達成する
ことができるものなのです。
また、ここで重要になることは税金計算用の決算書と上記概念を含んだ意思
決定用に作成した決算書との比較であり、税金計算用の決算書においては利
益が十分に出ているが意思決定用に作成した決算書(主にBS)では企業価値
が思うように上がっていない。ここで初めて差異分析が行え、企業価値の最
大化のための方策を打つことができるのです。

 

 

 

いかがでしたか?税金計算用の決算書にて、役員会報告資料を作っていた方
が多かったのではないかと思いますが、税金計算用の決算書はあくまでも過
去の指標であり、なかなか将来を移すことは難しい実態があるのです。