[2015年8月]残業承認制度は万能か?

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1 残業承認制度とは
残業承認制度とは、事前若しくは事後に上司等に残業申請を行い、上司等が
残業を許可した場合のみ、残業を行うことを認める(残業代を支払う)制度
です。
中国では、業務上必要性が無い残業を減らすため残業承認制度を採用する企
業が多く、多くの日系企業でも残業承認制度を採用しています。

 

 

2 多くの日系企業での運用
多くの日系企業では、残業承認制度がある場合、仮に終業時刻を過ぎて仕事を
している場合であっても、従業員が残業をすることの許可を得ていない場合は、
残業代を支払いません。専門家の方に聞いても、このような取扱いは何ら法的
には問題が無いと言われていることが多いです。

 


3 残業承認制度は万能か?
しかし、私は、中国における残業承認制度は万能なのか、以前から疑問を感じ
ております。といいますのも、日本でも、過去の労働裁判例の歴史上、残業承
認制度について同じような流れをたどっているからです。つまり、昭和の時代
(残業代請求について権利意識が低い時代)は、日本でも一部の企業が残業承
認制度を採用し、残業承認が無いことを理由に実際は仕事をしていても残業代
を支払っておりませんでした。しかし、裁判所の姿勢は年々厳しくなり、現在
では残業承認制度があり、残業承認を受けていない場合であっても、実際に業
務を行い、会社がそれを黙認している様な場合(更に言えば放置している様な
場合)、残業承認を受けていない事例であっても、裁判所は実労働時間に応じ
て残業代を支払うよう命じるようになりました。裁判所は、弱い立場にある労
働者は、会社に気を使って残業申請を行えず、やむを得ずサービス残業をして
いるケースが多いと考えているようです。

 


4 最近の裁判例
最近の上海市の裁判例(2013年?二中民三(民)?字第1146号判决)も、「仮
に会社に残業承認制度があり、従業員が残業申請を事前に行わなかったとしても、
申請する時間が無いなどの事情がある場合もあるのであるから、従業員がタイム
カード等で残業を行なった事実を証明すれば、会社は残業代を支払わなければな
らない」と判断しています。深セン市でも同種の裁判例があります。

 


5 残業代は残業代ではないことが多い
これは、日本・中国限らないことですが、残業代は退職時のトラブルを発端とし
て請求されることが多く、形式的には未払い請求であっても、実際は、慰謝料請
求、割増退職金として請求されることが多くあります。中国では残業代の消滅時
効制度がありませんので、時には莫大な金額になることがあります。平和な時は
問題が無かった残業承認制度も、揉め事になるとその効力が争われることも起こ
り得ます。残業承認制度は万能ではありませんので、管理職等の無駄な残業を行
わないような声がけや労働時間管理も同時に行う必要があります。