[2015年9月]寄附金課税 VS 移転価格課税 第3回

2015.09.01

kokusai_rogo.png

 

営業企画部 片瀬陽平

 

 

 第3回

 

寄附金課税 VS 移転価格課税 第3回

 

 

 

 さて、国際税務通信の第3回の今回は「寄附金課税と移転価格課税」のケース
スタディをお伝えしようと考えています。少し実務よりの内容になりますので、
実務と規定の考え方を合わせてご確認いただければ幸いです。

 


<海外子会社に対する赤字販売を行うケース>

 

【取引概要】

■当社は日本本社にて製造を行い、中国子会社にて販売(営業部門はなく、日本
本社からの指示による販売)を行っている

■日本本社と中国子会社の契約においては、中国子会社に為替リスク及び在庫リ
スク等の各種リスクは負担させないこととなっている

■グループ全体での連結損益は赤字であり、その中で日本本社は中国子会社の
赤字を軽減するために製品を原価割れの価格にて販売している

■中国子会社には倒産が見込まれるような客観的事実はない

■中国は赤字企業に積極的に移転価格の調査が入っているためにやむを得ない
状況にある

 

 

【見解】
この中で寄付金や移転価格に該当するかを判断するに当たりまず確認しなけれ
ばならない項目は「グループ全体での連結損益は赤字であり、その中で日本本社

は中国子会社の赤字を軽減するために製品を原価割れの価格にて販売している」
となります。

 


そもそも赤字取引は異常な取引であり、通常行われるべきものではありません。
独立起業であれば利益の獲得を当然の目的としてビジネスを行っているために
赤字取引があった場合には、税務調査等において必ず指摘を受ける項目である
との認識が必要となります。その上で赤字取引を正常な取引と主張できる可能
性を模索していくこととします。

 


日本本社はなぜ赤字の取引を行ったのでしょうか?

 


ここで考えるべくは「日本本社は中国子会社の赤字を軽減するため」と「中国は赤
字企業に積極的に移転価格の調査が入っているためにやむを得ない状況にある」
この2つの項目です。税務調査でこのように主張を行ってしまうと子会社の損失補
てんと指摘され、経済的な利益の無償の供与として寄附金課税される可能性が高
まります(倒産が見込まれる客観的事実はないために法基通9-4-1の適用もありま
せん)。税務調査ではやはり寄附金と指摘されることが多くなってくるものと思わ
れますので、前回に引き続き寄附金の意義を確認してみます。

 


【寄附金の意義】
寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問
わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与(広
告宣伝費、見本品費、交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く)
をした場合におけるその金銭の額若しくは金銭以外の資産の贈与時の価額又は
経済的利益の供与時の価額による

 


今回の赤字負担は広告宣伝費、見本品費、交際費、接待費、福利厚生費には明
らかに該当しませんので、税務調査ではほぼ間違いなく寄附金と指摘されてしまう
ことになるでしょう。

 


ただし、独立企業において赤字取引を通常の取引と主張し、税務調査において認
められているケースも存在しますので、次はそのポイントを確認してみます。

 


ポイントとなるのは「日本本社と中国子会社の契約においては、中国子会社に為
替リスク及び在庫リスク等の各種リスクは負担させないこととなっている」この項目
です。今回のケースでは日本本社が各種リスクを負担し、日本本社が販売の指示
を行っているために、各種リスクによる赤字の責任を負うのは日本本社であると考
えられます。日本本社は将来の大きなリターン(シェアや大口顧客)を得るために
販売を行っており、ただ単に販売により赤字になっているからと言って一概に寄附
金であると指摘することは税務当局でも行うことはできません。つまり、将来の大き
なリターンを得るために取引を行っているという主張を行えば一概に寄附金と主張
される可能性は、「子会社負担のため」や「広告宣伝費等である」等の主張を行うよ
りも格段に低くなります。

 


対価が何かを明確にすることが寄附金とされない大きなポイントになりますので、
是非確認してみてください。

 


最後に中国では赤字企業に積極的に移転価格の調査が入っているために赤字取
引によって損失の一部を日本で負担していたとしても中国側では移転価格の指摘
を受ける可能性が十分にありますので、日本だけではなく中国を含めた諸外国の
現況をしっかりと認識し、その上で移転価格のポリシーを構築することが重要とな
ります。