[2011年3月号]今年も続く給与の上昇

  2011年は中国「十二五(第12次5カ年計画、2011年~2015年)」開始の年です。この「十二五」の5大目標の1つに「所得増加」が掲げられています。また財政部としても「2011年も引き続き積極的な財政政策を実施する」と述べており、重点ポイントの中に「都市・農村部の個人所得引き上げ、国民の消費ニーズ拡大」が挙げられています。今回は、最近のニュースを確認しつつ、給与上昇に関してお伝えしたいと思います。

  2010年は、全国31の省・市において最低賃金が引き上げられました。またその平均上昇率は「24%」。決して低くない上昇率なのですが、北京市、広東省では2010年の調整から1年未満にして、再度最低賃金の調整が行われました。またその他複数の地域においても、最低賃金を再度増額する検討が始まっています。【 2011年:最低賃金の調整 】
 ● 北京市(1/1より実施) 旧)960元 ⇒ 新)1,160元(20.83%増)
 ● 重慶市(1/1より実施) 旧)680元 ⇒ 新)  870元(27.94%増)
 ● 江蘇省(2/1より実施)[一類地区]960元から1,140元へ(18.75%増)、[二類地区]790元から930元へ  
   (17.72%増)、[三類地区]670元から800元へ(19.40%増)

 ● 広東省(3/1より実施)[一類地区]1,030元から1,300元へ(26.21%増)、[二類地区]920元から
   1,100元へ(19.56%増)、[三類地区]810元から950元へ(17.28%増)、[四類地区]710元から850元
   へ(19.72%増)

  最低賃金は地域により含まれるものが異なるため、一概に比べることはできませんが、最低賃金の昨年平均上昇24%や今年既に決定した上昇率を見ても、調整の勢いはまだまだ止まっていないようです。引き続き調整される最低賃金ですが、それにはいくつかの原因があると言われています。その1つがワーカーの採用難。ご存知のようにワーカーは最低賃金に近い給与で働いており、彼らにとって物価高は、私たち以上に生活に大きな影響を与えています。都市に「出稼ぎ」に来ていたのは都市の給与が高く仕送り分まで稼ぎ出せるから。しかし今は生活費も高騰し、都市に「出稼ぎ」に来る理由がなくなってきています。そのような背景もあり、江蘇省は春節前である2/1より、最低賃金の調整を行ったのかもしれません。

  日系企業の多い上海市、また浙江省の最低賃金はどうでしょうか。昨年4月に上海と浙江省は現在の最低賃金へと調整されました。しかし物価上昇は調整後に大きく起こっています。あくまで予測になりますが、今年度にも再度最低賃金の調整が行われてもおかしくないかと思います。また、上海ではそろそろ昨年度の「平均賃金」が発表され、4月には今後一年間に適用される、社会保険基数の調整が行われます(住宅積立金基数は7月に調整)。4月以降の人件費増に対し、今年も引き続き充分な準備が必要ではないでしょうか。
  1月に発表された「中智薪酬」の「2011年の昇給状況解読」によると、2011年の上海における企業昇給率の平均は「8.8%」、日系企業においては「6~10%」という予測でした。法律を守る以上、一人当たりの人件費は今後下がることはないでしょう。であれば、売り上げや利益を「増やす」ことがどうすれば可能なのか、少しでも皆さまのお手伝いができればと思います。
  最後に宣伝ですが、クイックマイツの「給与調査2011」が遂に完成致しました!!中国全土にわたる日系企業約300社20,000人の中国人従業員生データを集計した、皆さまのご協力あっての力作です。詳しくはクイックマイツ山田までお問い合わせ下さい。