[2010年9月号]賃金条例(草案):速報

  立秋を過ぎましたが、まだまだ暑い日が続きますね。春にはほとんど新しい法律や条令、またガイドライン等の発表はありませんでしたが、夏に入りいくつか発表が続いています。今回はその中でも「賃金条例」の草案について、お伝えしたいと思います。
 この「賃金条例」、2年前から出る出ると噂され続け、その内容に注目されていました。そして今年7月末にとうとう国務院にその草案が提出されたとのこと。草案全文は公開されていませんが、各メディアのニュースを基に、主なポイントを整理してみました。

[1]当地のCPI(消費者物価指数、物価上昇率)の要素を考慮して昇給
[2][最低賃金の定義]を全国で統一
[3]独占業界・高級管理職の[高すぎる給与]を定期的に公表
[4][賃金保証金(基金)]の設置

[5][同一労働同一賃金]の原則
[6]企業側と従業員側(工会)との[協議]を通じた賃金の集団交渉
[7]会社に対して、給与資料の一定期間保存を義務付け
[8]「賃金条例」を違反する場合の罰則、法律責任の設定

[2]:「最低賃金」の定義は、中国各地で定義が異なり混乱の原因ともなっていました。この基準が「手取給与額」に統一される、という内容です。既に上海や北京では手取り額とされていますが、「最低賃金」に「社会保険」を含む地域も多く存在しています。製造業にとっては、大きなコストアップ要因となり得る規定と言えます。
[3]:中国の給与格差には何度か触れてきましたが、特に「電力」「電信」業界や金融業界等の独占業界では、表向きの数値だけでもその他業界と比較し「給与格差」が2~3倍、福利待遇等も含めると格差は5~10倍になっているとのこと。こういった「高すぎる」処遇を制限するため、処遇内容を公開し、昇給時にも当局への報告・許認可が必要になるとされています。低すぎる給与を調整し高すぎる給与を制限する、「調低限高」を実施することが[賃金条例]の核心とする記事もあります。
[4]:詳細は不明ですが、「未払い賃金が発生した場合の扶助基金」を設ける制度になるかと思われます。同制度は既に上海市には存在しており、年に1度1社につき「当年度の最低賃金」を納付することになっています。上海市ではこの「保証金(基金)」は、給与の「未払い」「遅延」が発生した場合に申請手続きすることで支払いが代行されます。昨年企業の「夜逃げ」が多く発生し、地方政府が一部給与肩代わりを行っていましたので、そのような事態を防ぐための全国的制度にあたるかと思われます。
[5]:①「同じ仕事に従事している」②「同じ作業量」③「同程度の労働業績」に当たる場合、「同一労働、同一賃金の原則」を適用するとされているようです。何を以って「業績が同じ」とするか等の詳細は不明ですが、昨今のスト騒動の大きな原因の一つともされていた「派遣工」と「正規工」の待遇差問題は対象となりそうです。
[6]:日系企業で最も注目されていた条項かと思います。今回の「草案」では「従業員側は、企業側へ昇給について集団協議を提起する権利がある」と記載されている模様です。この際「従業員側の代表」として役割を期待されているのが「工会」。記事では『中華総工会が「工会法」を修正し、工会の役割を完遂させよう』とする動きもあるようで、こちらにも今後の動きに注目が集まります。
[7]:現在でも「従業員名簿」という形式で2年間従業員情報を保管・管理することが義務付けられていますが、「給与情報」までは課せられていませんでした。
[8]:違反時には罰則付きの強制力を持つ法規となるとの情報です。しかし、有識者の間でも基本概念の統一ができていないとの情報もあり、どこまでの強制となるのか、また公布時期についてもまだ公にされておらず、新しい情報を待つしかないようです。

 あくまでも現在は「草案」の段階です。断片的な情報だけで過剰な反応は禁物です。今後も可能な限り客観的な情報を適時にお届けしていきたいと思います。