[2008年11月号]「企業従業員念じ有給休暇実施弁法」概要

「企業従業員年次有給休暇実施弁法」概要

 
「労働契約法 実施条例」の影に隠れるように発布された、「企業従業員年次有給休暇実施弁法(以下「有給弁法」と略称)」の存在は、みなさまご存知でしょうか?
実務的な観点から言えば、「労働契約法 実施条例」よりも遥かに[緊急度]も[重要度]も高いと思われる内容の規定と言っても過言ではありません。今年から、未消化の有給休暇は300%で会社が「買取る」事が義務付けられていました。この「有給弁法」では「有給休暇の付与日数の計算式」や「退職時の残存有給休暇の処理方法と計算式」などを改めて詳細な計算式まで提示して規定しています。しかも、違反した場合の「罰則」まで付ける徹底ぶりです。今回は、この「企業従業員年次有給休暇実施弁法」の概要を7つのポイントに分けてご説明します。
 
第1のポイント
●[今年から]、「有給弁法」規定を遵守した「有給休暇の対応」をしなければならない。
 2008年から「会社の仕事の都合で未消化となった有給休暇」に「買取り義務」が課せられてしまっています。その具体的な処理方法(有給日数の算出、買取り時の計算方法)を今年の12月には適用しなければならなりません。急ぎ内容を確認して、対応いただく事が必要です。
 
第2のポイント
●前職の勤続年数も「累計」して、有給休暇日数を付与しなければならない。
 日本人にとっては、甚だ理解し難い規定が明言されています。つまり、現有の従業員に対する今年度の法定有給休暇付与日数は、自社に入社する前の勤続年数も「累計」した上で、買取り義務のある「有給休暇日数」を付与しなければなりません。ただ、入社1年目の措置は議論が分かれており、現時点(08年10月10日)では明確な文書化された規定はありません。
 
第3のポイント
●有給休暇は、「自然年度」を基準として付与日数が計算されます。
 「自然年度」とは、1月1日~12月31日までの1年度を指します。これまでの規定(有給休暇条例)では、「入社1年後」から有給休暇が付与されると解釈され、その基準日を「入社日」としておられた会社も多いのではないでしょうか。「有給弁法」によって、今年中に「自然年度」を用いた各人の有給休暇付与日数を算出し直さなければならない、とも言えます。
 
第4のポイント
●本人都合で未消化である」場合は、「書面」で証明する必要があります。
 前述のように、「会社の仕事の都合で有給が未消化となった場合」に300%での買取り義務が発生する事になります。しかし、「本人が自らの意志で未消化とする場合」は、「書面」で「本人の了承」を取ることが明記されました。
 
第5のポイント
●入社時の「有給休暇付与日数」計算式、退職時の「有給休暇付与日数」計算式
 「自然年度」を基準として「有給休暇の付与日数」を計算する際に不明となるのが「入社時」、「退職時」の年度途中での入退社時です。その計算式は以下のように明記されています。
・入社時の有給付与日数=(当年残りの自然日数÷365日)×法定有給日数(累計勤続年)
・退職時の有給付与日数=(当年度で経過した自然日数÷365日)×法定有給日数-消化日数
 
第6のポイント
●有給休暇「買取り」時の日給計算式
「買取り」時の有給休暇1日当たりの「値段」は、以下の計算式に基づいて計算します。
・直前12ヵ月の[残業代を含まない]平均月給÷21.75日
 
第7のポイント
●社内規定に定められた「法定以上」の有給休暇日数も「買取り」の対象
 日本の就業規則をそのまま流用している場合、特にご注意下さい。「有給弁法」によって、労働契約書や就業規則に定められた「法定以上」の有給休暇についても「買取り」対象となると読み取れる条項も含まれています。

法律原文も非常に難解な中国語表記となっています。解釈・運用には充分ご注意下さい。