最近、「験資はもうやらなくてよいのでしょうか?」というお問い合わせが多いようです。今月はこの点について取り上げてみましょう。
最初に、験資とは何かについて説明します。験資とは、会社の設立や増資の際に資本金を払い込んだ後で、実際に資本金が払い込まれたことを中国の会計師事務所によって証明してもらうことです。験資は、改正前の「中華人民共和国公司法」(以下、会社法とする)では、法的に義務づけられていました[1]。
今回のお問い合わせ内容の発端は、その会社法が改正されたことによります(2013年12月28日に決定され、2014年3月1日より施行)。この改正の中で、験資を義務づけていた項目が削除されました。ではなぜ削除になったのでしょうか?それについては、今回の会社法の改正点の要点の1つである資本金の払い込みに関する変更内容にその理由があります。この変更内容を要約すると、工商行政管理局(会社の営業許可証の発行を管轄する)への資本金に関する登記事項について、従前では、出資者が引き受ける資本金の額と出資者が払い込んだ資本金額であったのに対して、今回の変更により、出資者が引き受ける資本金の額のみとなりました[2]。つまり資本金を払い込んだ実績を工商行政管理局において登記する義務がなくなったのです。そのために験資の必要もなくなったというわけです。
しかしながら、工商行政管理局に対しては必要ではなくなったものの、実務上では、現在でも、例えば外貨で払い込まれた資本金を人民元に両替する際に験資報告書の銀行への提出が必要です。また上海市内では増資の際の税関への登記事項変更手続きにおいて、験資報告書の提出が求められています。ですから験資はまだ必要だと言えます。
次に、今回の会社法改正により、我々外商投資企業に関連する法律への影響もみてみましょう。まず合弁企業に対しては、定款に「各合弁当事者の出資払込期限」を記載することが新たに求められることになりました[3] 。また合作企業に対しても、やはり定款に「各合作当事者の出資払込期限」を記載することが新たに求められております[4]。独資企業に対しては、「3年以内に資本金引受額の全額を支払うこと、またその内営業許可証発行から90日以内に資本金引受額の15%を支払うこと」を定めた箇所が削除されましたが[5]、「出資払込期限」については、定款上の記載事項となっています。内資企業に対しては、今回の改正で、定款上、資本金の払込期限の記載は求められていないのに対して、外商投資企業に対しては依然として求められております。
今までは営業許可証を見れば、資本金の払い込み状況を把握することできましたが、今後、新たに更新された営業許可証では、それができなくなります。一方では、これから新たに会社を設立する場合には、従来よりも出資払込期間を長めにとることができることになります。
(注)
[1] 改正前の会社法 第29条、[2] 改正後の会社法 第7条、[3] 国務院令 第648号 附件2 三、
[4] 国務院令 第648号 附件2 四、[5] 国務院令 第648号 附件2 五(四)