PDF版はこちら → 人事労務通信 2024年3月号
コンサルタントをしておりますと、「研修講師」という専門家の皆様とのやりとりをすることがございます。大変優秀な方がたくさんいらっしゃいますし、プライベートで交流させていただいている方も何人もおられます。
その中のひとりと先日お話をしていて、「人事制度策定のニーズをお持ちの企業様があったら紹介してよ」とお願いしたところ、「そうしたいけど、無理だ」と言われました。理由は、
・ 企業側の研修担当者は、人事制度や組織課題に関心がない
からとのこと。コンサルタントの場合、クライアントへのご支援にあたって、「何を提供するか」の前に、「どのような課題解決が必要か」を共有することが大前提なので、ご担当者がそうした問題意識をお持ちでない場合は、経営者か事業責任者との面談が必須になります。しかし、研修業界では必ずしもそうではないということを知って、ちょっと驚きました。
中小企業では、社長や総経理が、人事も研修もすべて、その具体的な内容を自分自身で確認しておられることが珍しくありませんが、少し会社規模が大きくなり、分業が進むとそういうことが起こってしまうようです。しかしこれはかなり大きな問題です。
人事の各機能(労務、評価、教育等)に分業が必要になる規模というのは、肌感覚で言えば社員300人程度以上かと思います。中間管理職が増えて経営方針の徹底が難しくなり、セクショナリズムが問題になってくるくらいの規模感ですね。だからこそ、「人材育成」「教育」というものが極めて重要になってくるフェーズでもあり、専任担当をつけるようにもなります。
そして冒頭の「研修講師」という専門職の皆様は、主にこの規模以上の会社で、「研修外注」に対応しているため、HRM(Human Resorse Management)ではなく、人事戦略とは切り離されてしまった研修予算を、妥当(と説明ができる)な研修テーマで粛々と消化することが目的になってしまっている、というわけです。
特にマネジメント系の研修などは、本来会社ごとにマネジメントルールがあり、マネジメントポリシーも固有に設定されているはずなのに、標準的な理論を、モデル化されたケースで教えられても、その会社の管理職を務める上ではピンと来にくく、受講生も「ふーん、ソレはソレだよね」という感覚になりがちです。一方、研修講師は、受講生の評価が次の仕事に直結しますから、「良かった」と言ってもらうために、ゲーム性の高い仕掛けを取り入れたりして「飽きさせない研修」にすることに心を砕きます。
それはそれで面白いでしょうし、無意味だとまでは言いませんが、「効果」を考えると、もったいないなあとは思います。
皆様の会社で研修計画を立てる際は、その企画に「研修転移(研修で学んだことを現場で活用し、実務上の成果に繋げること)」という概念がどれほどきちんと入っているかを確認いただきたいと思います。当然ながら、成果を定義するためには、責任者の関与が不可欠となります。日本の研修業界ではこの考え方が徐々に浸透してきているそうですが、中国ではまだまだなようですので、逆にこれは人材育成で、競争相手に差をつける大きなチャンスだとも言えるでしょう。
折角の貴重な研修予算ですから、有効に使いましょう。研修転移がきちんと組み込まれた企画を立てたいとお考えになられる経営者の皆さまは、是非マイツへご相談ください。