【2022年9月】中国印紙税法が7月1日から施行

 

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2022年7月1日付けにて印紙税法[i]が施行され、約25年に亘り施行された印紙税法暫行条例(以下、“暫定条例”と表記)[ii]が廃止されました。
印紙税法は全20条で構成され、概ね暫定条例を踏襲しているものの、以下及び巻末表の通り、規定の明確化や一部税率の変更(主として、引下げ)が加えられています。
更に、印紙税法の施行に伴い、財政部・国家税務総局公告2022年第22号(以下、“第22号補充規定”と表記)[iii]、財政部・国家税務総局公告2022年第23号[iv]、国家税務総局公告2022年第14号[v]等の補充規定が相次いで公布・施行されましたが、日中間での印紙税の二重課税の可能性も含め、日本企業(本社)と中国企業間で締結する契約にも影響が生じると考えられます。従い、本稿では日本企業の立場から、印紙税法について説明します。

 

  1. 印紙税法の特徴

まず、印紙税法では以下等が明確化され、国外で作成された文書も対象となること、増値税額は含まれないこと等が明確化され、特に前者は日本企業に影響を及ぼす項目と言えます(詳細は下述2以降を参照のこと)。

➤ 納税義務者の明確化(第1条):

✓ 課税文書(中国語:税凭以下同じ)を発行、または証券取引を行う組織及び個人を、印紙税の納税人とする

✓ 課税文書を中国国外で作成し国内で使用する組織及び個人は、本法に従い、印紙税を納付する

 

➤ 税額の算出方法について明確化(第5~11

✓ 課税契約の課税基礎は、同契約上の記載金額であり明記される増値税の税額を含まない

✓ 財産権移転文書の課税基礎は、同文書上の記載金額であり、明記される増値税の税額を含まない

✓ 営業帳簿の課税基礎は、帳簿に記載される払込資本金(株式資本)と資本剰余金の合計金額とする

✓ 証券取引の課税基礎は、取引金額とする

✓ 税額計算根拠が確定できない場合、契約書、財産権移転文書作成時の市場価格に基づき決定する

✓ 同一の課税文書に二つ以上の税品目が記載され、各々の金額が明記されている場合、それぞれに適用する税品目の税率に基づき、納付すべき税額を各自計算する。金額が個別に明記されていない場合、より高い税率を適用する、ほか

 

【お客様からのご質問項目の回答 (印紙税法、及び22号補充規定)】

Q1:誰が印紙(税)を負担しますか?

A1:同一の課税文書を二者以上の当事者により作成する場合、それぞれに関連金額に基づき、納付すべき税額を各自計算する(同法第10条)。更に、各納税者に帰属する金額の明記がない場合、納税者は課税文書上の記載金額(増値税金額を除く)を均等に割当てた金額により、課税基礎を確定する(補充規定第3条第1項)。
従い、例えば、通常の場合、2社が正本2部を作成した場合、それぞれ正本1部ずつの印紙税を負担します。

Q2:中国でも割印が必要ですか?

A2収入印紙が課税文書に貼付されている場合、納税者により収入印紙ごとに割印或いは手書きにより取消する(同法第17条)。但し、実務的には税務申告システムを利用した申告、納税することが多いとの認識です。

 

  1. 22号補充規定

印紙税法では、上述の通り、海外で作成した文書であっても中国国内で使用する場合、同法の適用対象と規定していますが、更に第22号補充規定では、課税文書となる場合には以下が含まれると規定しています。

➤  課税文書の対象が不動産にて、且つ当該不動産が中国国内にある場合

➤ 課税文書の対象が持分(株式、以下同じ)にて、且つ当該持分が中国居住者企業の持分である場合

➤ 課税文書の対象が動産又は商標使用権、著作権、特許権、ノウハウ使用権にて、その譲渡者又は取得者が国内にいる場合(但し、海外の組織又は個人が、中国国内の組織又は個人に販売するが、完全に海外にて使用される動産又は商標使用権、著作権、特許権、ノウハウ使用権を除く)

➤ 課税文書の対象が役務(サービス、以下同じ)であり、且つその提供者又は受領者が国内にいる場合(但し、海外の組織又は個人が中国国内の組織又は個人に提供するが、完全に海外で発生する役務を除く)

更に、同補充規定では、課税文書の納税者を“課税文書に対し直接な権利及び義務関係を有する組織と個人[vi]”と規定しています。従い、例えば、日中間での貿易取引や、役務の提供や受領(役務が完全に海外で発生・費消される場合を除く)、また中国現地法人の出資持分を譲渡した等々の場合において、印紙税法第12条や第22号補充規定第4条の免税要件、財政部・国家税務総局公告2022年第23号の優遇政策などの適用要件等に合致しなければ、日本企業であっても原則、印紙税法の納税義務が生じると考えられます。

この点について、下記“3.留意事項”の通り、日本の印紙税法で定める課税文書の定義とは異なり、日中間で二重課税の生じ得るケースが考えられる為、留意が必要です。

 

  1. 留意事項

中国の印紙税法では、上述の通り、課税文書を中国国外で作成しても中国国内で使用すれば納税義務が生ます。一方、日本の印紙税法[vii]は、日本の国内法として適用地域は日本国内に限定され、更に納税義務の有無は、課税文書がどこで作成されたか(言い換えれば、契約当事者の意思の合致はどの時点と証明されたか)を判断基準とします(下記“タックスアンサー”等を参照のこと)。

印紙税法は日本の国内法ですから、その適用地域は日本国内(いわゆる本邦地域内)に限られることになります。

したがって、課税文書の作成が国外で行われる場合には、たとえその文書に基づく権利の行使が国内で行われるとしても、また、その文書の保存が国内で行われるとしても、印紙税は課税されません。(中略)

ご質問の契約書は、双方署名押印等する方式の文書ですから、貴社が課税事項を記載し、これに署名押印した段階では、契約当事者の意思の合致を証明することにはならず、その契約当事者の残りのA社が署名等するときに課税文書が作成されたことになり、その作成場所は法施行地外ですから、結局、この契約書には印紙税法の適用はないことになります。(中略)

また、文書の作成方法がご質問の場合と逆の場合、つまり、アメリカのA社において課税文書の調製行為を行い、A社の署名等をした上で貴社に送付され、貴社が意思の合致を証明する場合には、貴社が保存するものだけではなく、A社に返送する契約書にも印紙税が課税されることになります。

タックスアンサー:外国で作成される契約書|国税庁 (nta.go.jp)より抜粋

従い、日中間の輸出入取引や役務取引、また中国現地法人の持分譲渡等の際に“日本で作成した文書に対しては、日本の印紙税も課されます。一方、現時点では施行直後の中国印紙税法に対し、中国税務当局の今後の実務運用に注意を払う必要があるものの、更に日中双方での印紙税の二重課税を回避すべく、少なくとも日本の税法上で課税文書とならないよう対応する、例えば、先に日本で作成(署名押印)後、中国で作成(契約当事者の意思の合致を証明)する[viii]等が、対応策の一つと考えられます。
但し、実務では課税文書としての適用要件の合致有無等、すなわち、日中双方において印紙税法の納税義務が生じるか否かについては、顧問税理士など専門家にご相談の上、慎重にご判断、ご対応願います。

 

FYI:【巻末表:印紙税率に係る参照資料】

税目 税率 暫定条例からの主要な変化
借入契約 借入金の0.005%
ファイナンスリース契約 リース料の0.005% 追加
売買契約 代金の0.03%
請負契約 報酬の0.03% 税率↓(旧:0.05%
建設工事契約 代金の0.03% 建設工事実地調査設計契約:税率↓(旧:0.05%

建築据付工事請負契約:―

運輸契約 運輸費用の0.03% 税率↓(旧:0.05%
技術契約 代金、報酬、使用料の0.03% “記載金額”から“代金、報酬、使用料”へ詳細化
リース契約 リース料の0.1%
保管契約 保管料の0.1%
倉庫保管契約 倉庫保管料の0.1%
財産保険契約 保険料の0.1% 税率↑(旧:0.03%
土地使用権、建物等建築物と構築物所有権譲渡文書 代金の0.05%
持分譲渡文書 代金の0.05%
商標使用権、著作権、特許権、ノウハウ使用権譲渡文書 代金の0.03% 税率↓(旧:0.05%
営業帳簿 払込資本金(株式資本)と資本剰余金の合計金額の0.025% 税率↓(旧:0.05%
証券取引 取引金額の0.1% (旧項目は権利証、許可証類:1件につき5元)

 

 

[i] 印紙税法の原文は右記URLの通り。URL:中华人民共和国印花税法 (chinatax.gov.cn)
尚、印紙税法と暫定条例の主要な変更点は、マイツグループ・ニュースレター【華南通信】2022年8月(中華人民共和国印紙税法と従来の印紙税暫定条例の変更点)をご参照いただきたい。

FYI:マイツグループ・ニュースレターURL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ (myts.co.jp)

[ii] 暫定条例の原文は右記URLの通り。URL:中华人民共和国印花税暂行条例 (chinatax.gov.cn)

[iii] 第22号補充規定の原文は下記URLの通り。
URL:财政部 税务总局关于印花税若干事项政策执行口径的公告 (chinatax.gov.cn)

[iv] 財政部・税務総局公告2022年第23号の原文は下記URLの通り。
URL:财政部 税务总局关于印花税法实施后有关优惠政策衔接问题的公告 (chinatax.gov.cn)

[v] 国家税務総局公告2022年第14号の原文は下記URLの通り。
URL:国家税务总局关于实施《中华人民共和国印花税法》等有关事项的公告 (chinatax.gov.cn)

[vi] 第22号補充規定(第1条第1項)を参照のこと。

[vii] 印紙税法の原文は右記URLの通り。URL:印紙税法 | e-Gov法令検索

[viii] その他、課税文書に該当するか否か等の詳細は、印紙税法基本通達(第44条)を始め、国税庁のHPに掲載されている下記URL等を参照のこと。但し、実務的には個別、具体的に専門家に相談し、慎重にご対応願いたい
URL:通達目次/印紙税法基本通達|国税庁 (nta.go.jp) / URL:(別紙)|国税庁 (nta.go.jp)

URL:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁 (nta.go.jp)ほか

 

 

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