【2022年8月】中国のビザ政策の転換による大幅緩和

 

PDF版はこちら → China Info JPマイツ通信 2022年8月号

 

これまで中国の厳格な水際対策により、省レベルの政府機関による招聘状(PU)の発給を含むビザ取得の難易度の高さや、時には約1か月にも及んだ中国への入国時の隔離期間もあり、特に出張者には中国渡航のハードルは高いと言えました。しかし、昨今の経済状況[i]や各国の投資姿勢の変化[ii]等を背景に、本年6月以降、ビザ政策と水際対策共に、大幅な緩和策が採られています。

この為、出張者を始めとした日中間の往来の増加が期待され、本稿では直近のビザと入国時の隔離政策、本政策の留意事項等を説明します。(本稿は7月20日時点の情報に基づきます。最新情報を常にご確認ください。)

 

  1. ビザ政策

2020年6月以降、Zビザ(就業ビザ)やSビザ(帯同家族ビザ)、更にMビザ(出張ビザ)の発給の前段階として、中国にて省レベルの外事弁公室或いは商務庁が発給する「招聘状」(以下“招聘状(PU)”と表記)の取得が要求されていました[iii]。招聘状(PU)の発給は新型コロナウィルスの感染状況により調整弁的に用いられ、時々によりその発給量にも差異が見受けられましたが、直近は感染拡大状況から殆ど発給されず、特にMビザ等の取得は極めて難易度の高いものとなっていました。

しかし、上述のマクロ経済情勢や各国の投資姿勢等を鑑み、本年6月以降は順次緩和され、現在、中国全土にて、以下の通り、ZビザとSビザ、続いてMビザも上記の政府機関により発給される招聘状(PU)が不要となりました。

➤ZビザとSビザ:2022年6月17日より、招聘状(PU)が(要求資料から無くなり)不要に
URL:外国人赴华签证办证须知(2022年6月17日更新)-通知 (visaforchina.org) (日本語版には掲載無し)

➤Mビザ:2022年7月1日より、招聘状(PU)が(同上)不要に
URL:中国ビザ申請についてのお知らせ(2022年7月1日更新) – 中華人民共和国駐日本国大使館 (china-embassy.gov.cn)

これにより現在、新型コロナウィルス発生前と同様の以下フローにて、ビザ取得の審査・発給が可能となるなど、大幅に緩和されています。(但し、従前の日本国籍者等に対する短期ビザ免除措置は現在も認められず、現在は滞在日数に関わらず、何らかの種別のビザ取得が必要です[iv]。)

本緩和政策により出張者の中国渡航のハードルが下がり、一時停止中のプロジェクトの再開等も期待されます。

一例として、新規設立のケースでは法定代表者の認証(本人確認)をリモートでは代替不可とする地域では、ビザ発給の難易度に加えて、下述の入国時の隔離期間がネックとなり、当該プロジェクトを延期する例も複数見受けられました。また、経営管理や内部統制の観点から求められる現地法人の訪問や内部監査ができない等の弊害が生じていましたが、これらの再開なども検討に値すると考えられます。

  1. 中国の水際対策(入国規制)

日本での水際対策の大幅な緩和[v]とは対照的に、中国では厳格な水際対策が敷かれていました。例えばMビザの発給を受けられるとしても、中国への入国時、また他地域への移動時も併せて1か月超にも亘る隔離期間もあり得た為、これらを考慮して中国出張を選択できず、各種の弊害が生じていたのは、前述の通りです。

この点について、6月28日付け「新型コロナウィルス予防政策(第九版)の通知」[vi]が公表されました。同通知は、海外からの入国者の隔離期間10を含む“7+3”措置が示されています。

この“7+3”措置とは、政府の“7日間の集中隔離医学観察+3日間の自宅健康観察”、すなわち、駐在員や出張者の入国時には、指定施設(指定ホテル)での7日間隔離+自宅(や出張時の滞在ホテル)での隔離3日を待機期間とし、隔離期間が大幅に短縮されています。

現在、ロックダウン解除後、約2か月を経たばかりの上海や、6月に都市中心部にクラスターが発生した北京市[vii]でも、上述の10日間の隔離となっています。

通信行程カードのアスタリスク(“*”)表示の即日廃止:

更に、6月29日には工業信息部より“通信行程カード(実際は携帯APP)のアスタリスク(*)表示の取消”が公布されました。この通信行程カードとは、通信履歴から行動地域を特定するものであり、もし(通信/行動履歴による)滞在地が中・高リスク地域に該当すればアスタリスクが表示されました。これまでは同一都市内の一部にでも当該リスク地域が含まれれば都市全域にアスタリスクが表示された為、滞在地域自体は中・高リスク地域ではなくとも、同表示により、行動制限対象と看做されるとの問題が見受けられました。
しかし、感染抑制対策の効率化や外出時の利便性を勘案し、公布日に即日廃止されています。

 

  1. 留意事項

最大の留意事項は、言うまでもなく、新型コロナウィルスの感染状況の拡大次第では、再び厳格な入国規制や移動制限が課される可能性にあります。日本では既に第7波が到来しましたが、中国でも足元は、同様に再拡大傾向にあります。また、出張先での感染者の発生など、不確定性には十分に留意する必要があります。

更に、入国後には上記の通信行程カードに加えて、健康コード(携帯APP)に緑色(陰性)が表示されず外出できない[ix]、また外出先で同コードが変化し一歩も出られない等の事例も見受けられました。この為、複数拠点を移動する場合、各省・直轄地の健康コードを事前ダウンロード・入力し、入力項目に不明点があれば滞在予定先に事前確認し、また不要不急の外出はしない等の慎重な対応が求められます。

一方で、ゼロコロナ政策の解除時期は予測不能であり、今回の各種水際対策の緩和策を受けた比較的緩やかな時期の訪中も一案です。但し、あくまでも最新情報の入手に留意しつつ、慎重な行動が求められます。

 

 

[i]一例は4月の中国工業生産は上海ロックダウンの影響等もあり、前年同月比-2.9%を記録。詳細は下記URLを参照のこと。
URL:Industrial Production Operation in June 2022 (stats.gov.cn)

[ii]在中国欧州連合(EU)商工会議所のレポートでは会員企業の23%が中国市場からの撤退や投資計画の見直しを検討、在中国米国商工会議所の調査でも会員企業の52%が既に対中投資の減少や延期、と各HPに掲載している。

[iii]過去の経緯はJPマイツ通信を含む、ニューズレターを参照のこと。URL:ニューズレターアーカイブ| 株式会社マイツ (myts.co.jp)

[iv]新型コロナウィルス発生前には日本国籍者等に対する短期ビザ免除措置があり、同措置の要件に該当すれば、滞在15日以内の商用等を目的とする中国渡航にはビザ不要とされた。

[v]詳細は、下記URLを始めとする、外務省等のHPを参照のこと。
URL:新型コロナウィルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

[vi]原文は右記URLの通り。URL:国家卫生健康委员会 (www.gov.cn)

[vii]プレスカンファレンスの概要は右記URLの通り。URL:市政府新闻发布会_视频北京-首都之窗 (beijing.gov.cn)

[viii]原文は右記URLの通り。URL:通信行程卡取消“星号”标记 (miit.gov.cn)

[ix]滞在先のホテルから社区への申請が漏れ、緑字が表示されないケース等も過去にあり、くれぐれも事前確認、準備を願いたい。

 

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