【2024年10月】上場企業(会社法等監査企業を含む)へ注意喚起!

 

PDF版はこちら →China Info JPマイツ通信 2024年10月号

 

本稿は、日本本社が上場等により、監査法人の監査を受けている企業への注意喚起となります。
(但し、非上場企業におかれましても、為参考情報としてご活用いただけましたら幸いです。)

 

現在、日本本社が大規模な監査法人(以下“四大監査法人”と表記)[i]の監査を受けている場合、現地法人の状況に応じて、今期(2024年期)以降の年度監査において、中国現地法人の現行監査人=年度監査を依頼する中国の会計事務所)の変更を求められる可能性があります。また、日本本社が四大監査法人以外の監査法人により監査を受けている場合には2025年期から現行監査人の変更を要請される可能性があります。

今期以降、この“現地法人の監査人を変更すべし”との日本の監査法人からの要請は、日本の監査基準等の改正に起因します。これにより、現地法人の監査費用に相応の追加コストが生じ、また監査手順の追加・変更等により、現地法人側が対応すべき工数の増加が予想されます。

従い、本監査人変更が生じ得る背景、改正内容、現地法人への影響、対応方法と留意事項を、本稿で解説します。

 

1.中国現地法人の監査人変更の要請が生じ得る背景

まず、今期以降、日本の監査法人から中国現地法人の監査人変更の要請が生じ得る背景は、国際監査基準(ISA600(以下“ISA600”と表記)[ii]の改正に起因します。国際監査基準(ISA)とは、言うなれば国際財務報告基準(IFRS)の“監査基準版”とも言うべきものです。

日本公認会計士協会は改正ISA600を受けて、2024年1月12日付けにて改正「監査基準委員会報告書600(グループ監査における特別な考慮事項)」(以下“改正監基法600”と表記)[iii]を公表し、日本では以下のスケジュールで、改正監基報600が日本本社(上場会社、会社法監査適用会社等)に適用されます。

①    四大監査法人の監査を受ける場合:202441日から開始する事業年度の監査から適用
②    四大監査法人以外の監査を受ける場合:202471日から開始する事業年度の監査から適用

従い、もし日本本社が3月末決算の場合且つ四大監査法人の監査を受けている場合や、非四大監査法人でも事業年度が上記②以降に開始すれば、現地法人は今期も対象となります。

 

2.変更内容

次に、具体的な変更内容を見ます。改正監基報600には“グループ監査における特別な考慮事項”との表題が付記されています。グループ監査人、すなわち日本の監査法人は、クライアントの日本本社が作成する連結財務諸表に取り込まれる子会社や関連会社等の企業、事業単位、機能若しくは事業活動又はそれらの組合せを「構成単位」(すなわち、会社毎)として考えますが、改正監基報600の適用前は、そのグループ財務諸表に“財務的に”若しくは“特別な検討を必要とするリスクがある構成単位”に対して、財務情報の監査や特定のリスクに対する監査手続きが必要でした。一方、改正監基準報600の適用後は、構成単位毎ではなく、連結財務諸表の勘定科目レベルに着目したアプローチにより監査を実施します。

更に、中国現地法人への影響を考える場合、特に、監査法人(グループ監査の責任者)は、グループ監査にかかわる構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲について直接責任を負うこととなりました。言い換えれば、日本親会社の監査法人は、従来よりも更に、海外の監査人(Ex.中国の会計事務所)が、適正な監査をしているかの品質管理を、直接的に確認・検証することが求められています。

従い、重要性の観点からも、必ずしも連結対象の全ての中国子会社に影響が生じる訳ではありませんが、日本の監査法人から見て、現地の会計事務所の監査手順や監査品質の確認検証が困難、或いは現地会計事務所とのコミュニケーションが円滑に取れず、グループ監査人として品質管理に責任が負えないと判断した場合、日本の監査法人の監査品質レベルに見合う、現地会計事務所への変更をクライアントに要請することになります。

 

3.中国現地法人への影響

率直に申し上げて、中国の会計事務所が行う年度監査の品質は、非常にバラツキがあると感じます。残念ながら、日本の監査法人の品質管理に合格でき、また日本の監査法人の指示(連結インストラクション)や意図を適切に理解し、その監査証跡も含めて、日本の監査法人が納得し得る現地会計事務所は、決して多くないと感じます。この為、日本の監査人が四大監査法人であれば、監査品質が担保できる、中国の同じメンバーファームへの変更を依頼する例が、今後、当然に生じると予想します。
いずれの監査人に変更するにせよ、現地法人への直接的な影響として、通常、監査費用が増加する為、直接的なコストアップ要因となります。また改正監基報600は、あくまでも日中間の監査人の問題ですが、(変更前より監査品質レベルの高い)監査人からは、監査プロセスや要求書類の増加、また監査人への説明等々、現地法人が対応すべき工数は増えると考えます。

 

4.対応方法と留意事項

もし監査人変更となれば、繰り返しになりますが、現地法人の費用の増加や、監査を受入れる現地法人側の事務負担が増えると予想されます。単に“中国の現地法人は年度監査が必要だから(安価でも良い)”等の理由であれば監査人変更は已む無しかと考えますが、既に、現地法人と中国側の監査人に良好なコミュニケーションが成立し監査品質も満足しており、“変更したくない”とのケースもあり得ると思います。この場合には、中国の監査人の客観的な評価(現地会計士協会や全国ランキング情報)の提供等を通じて、日本の監査法人の理解を得るべく、交渉されることも一案と思います。また、監査人の変更を受入れるのであれば、少数ながら日本の監査法人が許容できる、(監査品質と日本語コミュニケーション等を担保できる)現地監査人への変更を提案されることも一案と思います(宜しければ、下述の上海マイツ会計師事務所をご参照ください)。

一方で、高品質の監査は、財務情報の適正性の担保だけでなく、当該現地法人の不正の抑制や予防にも役立つ[iv]為、メリット面も踏まえて、監査人変更を前向きに捉え、検討・対応されることをお勧めします。

上海マイツ会計師事務所のご案内

上海マイツ会計師事務所は、中国全土で7,000事務所以上ある会計師事務所業界において、2010年度には初の「100強」にランクイン(全国85位、上海10位)し、20年以上のサービス提供の間に、中国の国情と国際基準に合致した業務基準、専門規範、品質管理、リスク管理、事務所管理などの一連の管理システムを構築して、日本人公認会計士と中国人公認会計士を含む110名以上のスタッフからなる専門チームを確立しています。

現在も上海市登録会計士協会の最高級・Aランク認定を維持し、円滑な日本語対応を可能とする会計事務所です。監査品質は勿論、日本語対応に加えて、必要に応じご本社への監査報告会なども実施しています。是非、同事務所ジャパンデスク或いは同東京支店(株式会社マイツ内に併設)に、お声掛けください。

 

 

 


[i] 右記URLに基づき、四大監査法人と読み替えている。URL: 01.pdf (fsa.go.jp)

[ii] 原文は下記URLの通り。
URL:International Standard on Auditing 600 (Revised), Special Considerations—Audits of Group Financial Statements (Including the Work of Component Auditors) | IAASB

[iii] 改正監基法600の原文及び関連情報は右記URLを参照のこと。URL:5-24-0-2-20240124.pdf (jicpa.or.jp)

[iv] 詳細は、以下URLのマイツグループニューズレター(JPマイツ通信2021年4月号)を参照のこと。
URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ (myts.co.jp)