PDF版はこちら → China Info JPマイツ通信 2022年11月号
中国では10月22日に第20回共産党全国代表大会(以下、“共産党大会”と表記)が終幕し、習近平氏の異例の3期目の総書記就任が決定されたばかりです。
中国の政治イベントは普段の企業活動を実施に必ずしも直接的に影響を及ぼすとは言い難いものの、同氏の総書記の続投や党大会前後の動向は異例ずくめでもあり、今後の日中間、或いは現地法人のビジネス活動にも影響を与えるものとも考えられます。
従って、今回は共産党大会や政治体制の仕組みと党トップの選出方法、及び異例ずくめの諸事項等を簡単に紹介すると共に、中国ビジネスに直接的な影響のある今後のゼロコロナ政策の見通しを最後に解説します。
1.共産党大会と政治体制の仕組み
第1回共産党大会が1921年に開催され、第11回(1977年)以降は5年ごとに定期的に開催されています。近年は以下の通り、(1)既往の活動運営の総括と今後の政策方針の発表、(2)共産党指導部の人事に直結する中央委員の選出、(3)党規約の改正等を含み、第20回は2022年10月16日から22日まで開催されました[i]。
(1)既往の活動運営の総括と今後の政策方針の発表:
まず、既往の活動運営の総括として、第18回全国代表大会からの10年間の重大及び歴史的意義のある以下の3つを掲げ、“第1の100年間の奮闘目標”を達成したと総括しました。
➤中国共産党の創立100周年
➤中国の特色ある社会主義の、新時代への突入
➤貧困の克服、全面的に小康社会(ややゆとりある社会)の建設との歴史的任務の完成
そして、“第2の100年間の奮闘目標”として、経済的な観点からは“高品質の経済発展における新たなブレークスルーの達成”、“科学技術の自立と自己改善能力の大幅な向上”、“社会主義市場経済システムの更なる改善”、“より高いレベルの開放経済の新システムの基本的構築”等々、政策の大方針を謳っています。
(2)共産党指導部の人事に直結する中央委員の選出:
共産党大会の最終日に、約200名(今回205名)の中央委員を選出します。翌日に中央委員総会ともいうべき第1回会議(今期であれば第20期の“一中全会”)が開催され、中央委員から政治局委員24名(前回25名)が、更に政治局委員から(今回も)7名が、約14億人の最高指導者ともいうべき政治局常務委員に選出されます。今回の共産党大会では、下述2の“68歳定年制”に抵触せず、残留も取り沙汰された李克強首相や汪洋政治協商会議主席等の名前が中央委員の名簿に無く、この時点で引退が明確となりました。
(3)党規約の改正:
また、共産党大会では党規約の改正が可能です。今回の共産党大会では、習近平氏の指導的地位をより高める、以下の“二つの確立”の趣旨等を反映した党規約に改正されました。
➤(党は習近平氏を)党中央の核心とし、党全体の核心としての地位を確立する
➤(党は習近平氏の)新時代の中国の特色ある社会主義に関する習近平思想の指導的地位を確立する
更に、上述した“第2の100年間の奮闘目標の実現”なども、当該党規約に謳われています。
2.異例ずくめとなった共産党大会等の諸事項
今回の共産党大会前後に発生した、以下等の事態も特筆されます。
➤経済指標の発表を延期
共産党大会の直前に予定されていた、第2四半期の経済統計の発表が延期されました(右表参照)。上海市ロックダウンを始めとした中国の経済活動の回復度合いを見る上でも注目されていた指標の公表延期は異例と言えました(脚注[ii]の通り、同大会終了後に各種統計を発表)。
出典:国家統計局HP(右記は10/24時点)
➤共産党大会での慣例踏襲からの変更
2002年以降、上記の中央委員の選出には68歳定年制(共産党大会時に68歳に達していれば引退)との不文律がありました。
一方で、共産党の組織とは別に、毎年3月に開催される全国人民代表大会(日本の国会に近似)において、既に憲法の改正により、国家主席の任期(従来、1期5年、2期まで)が撤廃されました。この為、今回の共産党総書記(中央委員の選出)についても、上記の68歳定年制が踏襲されないとの見方が開催前から根強くあり、結果として69歳の習近平氏が3期目の総書記に就任する一方で、前述の李克強氏や汪洋氏(共に67歳)が引退するとの、慣例からの大きな変更となりました。
更に、23日開催の第20期一中全会では、習近平氏を共産党総書記・序列1位に、また序列第2位として上海市のロックダウンの責任者である上海市書記・李強氏以下、習近平氏の影響力が強いとされる計7名が常務委員に選出された一方で、40代で政治局委員となった共産党青年団出身の次世代リーダーともいうべき胡春華副首相が今回、政治局委員から外れるなど、大幅な変更が見られています[iii]。
3.今後のゼロコロナ政策は?
このように、異例ずくめの党大会が終了し、この一大政治イベント後の最大の関心事は、最後にゼロコロナ政策の継続有無と考えます。日本からの出張ベースでの技術支援や、現地法人運営等々、日中間のビジネスに直接的に影響を及ぼします。一部では共産党大会の終了後にゼロコロナ政策からの政策変更や撤廃を期待する向きもありましたが、現時点での各種の公開情報を基にすれば、少なくとも当面は堅持される可能性が高いと考えます。
一例として、党大会に先立ち開催された7中全会(第19期第7回会議)期間中、プレスカンファレンスにて、国家衛生健康委員会の米鋒氏は改めて“海外からの流入を防ぎ、内部でのリバウンドを防ぐ”との“動態的ゼロコロナ”の堅持を強く打出し[iv]、各種の中国メディアも大きく報じました。
また、現況下では、中国全土で一日あたり200~300症例(海外からの輸入症例は二桁)程度の感染者の増加が報道[v]されると共に、各地で新規感染者の発生に伴う小区レベル等での隔離・封鎖も採られており、名実共にゼロコロナ政策は継続しています[vi]。
本年6月末に中国の水際対策では、入国時の隔離措置期間は10日間に短縮されました[vii]が、現時点では一段の緩和は発表されておらず、また上述の通り、ゼロコロナ政策の堅持が強調されるなど、中国への入国・国内移動に伴う不確実性は高止まりしたままと考えられます。従い、少なくとも現時点では、これらの不確実性を念頭に、各種の対応や決定を行う必要がある点には、引続き、留意が必要です。
[i] 第20回共産党大会の詳細(1-(1)~(3)の内容を含む)は下記URLを参照のこと。
URL:中国共产党第二十次全国代表大会专题报道 (people.com.cn)
[ii] 10月24日にGDP(前年同期比3.9%増)を含む各種の四半期データが公表された。
[iii] 政治局常務委員7名及び政治局委員は下記URLを参照のこと。
URL:中国共产党第二十届中央委员会第一次全体会议公报–中国共产党第二十次全国代表大会专题报道–人民网 (people.com.cn)
[iv] 詳細は、右記URLを参照のこと。URL:国务院联防联控机制权威发布(2022年10月13日)_中国政府网 (www.gov.cn)
[v] 連日の症例数は右記URLを参照のこと。URL:新型冠状病毒肺炎疫情防控_宣传司 (nhc.gov.cn)
[vi] 日本では特段、報道されていないものの、マイツグループのネットワークとして当該情報を確認済。
[vii] 詳細はJPマイツ通信2022年7月号、またマイツグループの各通信は下記を参照のこと。
URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ (myts.co.jp)
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