【2021年5月】Withコロナ下での個人所得税の確定申告 申告期限(6月30日)までの要確認・対応事項

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日本では所得税は415日に確定申告期限が到来しましたが、中国では「個人所得税法」[i]の通り、31日~630日が年度確定申告(以下“確定申告”と表記)の期間です。特に2020年度はコロナ禍により、日本の一時帰国期間が予想外に長期化した駐在員や早期に本帰国した駐在員も散見された為、確定申告が生じるケースも十分に考えられます。従い、日本本社として駐在員の中国での適正な納税対応の有無を確認する為に、本稿にて中国の確定申告制度について説明します。

1.    中国の確定申告の対象者

関連規定として、201911日付け改正施行「個人所得税法」や「同実施条例」、補充規定である国家税務総局公告2018年第62号等が挙げられますが、実務対応として「2020年度の個人所得税総合所得の確定申告関連事項の実施にかかる公告」(2021年第2号)[ii]により、以下等が定められています。

(1)    確定申告が必要な場合:
以下のいずれかの状況に該当する場合、確定申告を行う必要があります。

Ø 予定納税の税額>通年での納税税額、且つ納税人が税額還付を申請する場合

Ø 総合所得収入が12万元を超え、且つ追納すべき税額が400元を超える場合

(2)    確定申告が不要な場合:

個人所得税を予定納税し、且つ以下のいずれかの状況に該当する場合、確定申告が不要となります。

Ø  確定申告にて税金追納する必要があるが、年度総合所得収入が12万元を超えない場合

Ø  確定申告にて追納する必要があるが、税額が400元を超えない場合

Ø  予定納税の税額と年度で納税すべき税額が一致するか、税金の還付を申請しない場合

 

留意事項として、「個人所得税法」により非居住者は“賃金・給与所得等について、源泉徴収義務者が月次にて税金を納付し、確定申告は行わない”と定められ、確定申告の対象とはなりません[iii]。従い、確定申告は居住者(すなわち、2020年の年間滞在日数が183日以上)の個人が対象となる点に留意が必要です。

また2020年度は駐在員の一時帰国の長期化や早期の本帰国等により、中国での予定納税額と納付すべき税額

に差異の生じるケースが生じ得ます(後述2)ので、必要に応じ、還付・追納等の対応が必要と考えられます。

 

2.    確定申告の対象事例

確定申告の対象事例を以下に列挙します[iv]。但し、繰り返しになりますが、居住者が前提です。

 

中国業務に専念

居住地

日本

給与支払

現法

現法較差補填

本社兼務

中国‐a

日本‐b

納税

義務

中国

課税所得:a+b

日本

課税所得:b

*日本の役員報酬や中国の董事報酬等を考慮せず

Ø  還付申請事例①:

中国で中国現法の給与と日本本社による当該較差補填の合  算金額を課税所得として納付する一方で、日本払い給与に関しては“日本の非居住者として”20.42%の所得税を支払い二重払いとなっていた場合<右表>
 ⇒中国の個人所得税法[v]においても外国税額控除の制度があり、確定申告により日本で支払った所得税額が外国税額控除の適用対象となります。

また、一時帰国中に日本の業務を兼任した場合には、財政部、税務総局公告2019年第35[vi]に則り、税額を計算しますので、更に還付の生じる可能性があります。

財政部、税務総局公告2019年第35号の詳細は、JPマイツ通信20211月号等を参照ください[vii]

Ø  還付申請事例?:

駐在員(居住者)が早期に本帰国し、基礎控除を全額(6万元)控除していない場合
⇒月次予納では月額5,000元を基礎控除として計算しますが、確定申告時には下記の計算式を用います。

計算式:納税年度収入額-基礎控除60,000元-専門控除、専門附加控除及びその他国で定める控除

Ø  追加納税事例①:

(現地法人と駐在員事務所などの兼務により)2か所以上から給与を受領し、各所で個人所得税を源泉納付。但し、全所得の合算により、納税区分(タックスブラケット)が繰り上がり、高率での納税が必要となった場合:

⇒この場合、納付先の税務局は、勤務地のいずれかの主管税務機関から一つ、自主的に選択します。

 

3.    その他留意事項

まず、外国税額控除や還付申請の実務対応時には、所在地の税務当局等の見解・対応を確認する必要があります。また、もし早期に一時帰国した非居住者であれば確定申告の対象とはなりませんが、例えば年1回性賞与の計算方法は居住者と非居住者では按分する月数が異なる等、正しく精算納税をしていない場合などでは過少納税の可能性もあります。

従い、もし2020年度において当初の計算方法のまま月次予納を継続・完了した場合などでは還付・追納いずれの可能性も生じ得る為、日本本社として正確な税額の把握は勿論、必要に応じ、居住者・非居住者のステータスを問わず、適切な納税対応が求められます[viii]

 

 


[i] 個人所得税法(第11条)等を参照のこと。個人所得税法の原文は下記URLの通り。

URLhttp://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c3967308/content.html

[ii] 2021年第2号公告原文は右記URLの通り。http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n363/c5161493/content.html

[iii] 個人所得税法(第11条)等を参照のこと。

[iv] その他確定申告の事例や年度報告の詳細は、上海通信20213月号を参照のこと。また上海通信を含む、過去のニュースレター(各マイツ通信ほか)は右記URLの通り。URL:https://myts.co.jpcategory/newsletter/

[v] 個人所得税法(第11条)等を参照のこと

[vii] JPマイツ通信のURLは上記脚注ⅳを参照のこと。

[viii] 詳細は上海通信20195月(増刊号)、URLは上記脚注ⅳを参照のこと。

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