2019年に入り、国家外貨管理局及び中国人民銀行より外貨・クロスボーダー人民元の資本金を用いた再投資を認める、「クロスボーダーの貿易及び投資の利便化の更なる促進に関する通知」（以下“匯発［2019］28 号[i]”と表記）、「一般性外商投資企業の資本金の国内再投資に関する関連規定の説明」（以下“関連規定の説明”と表記）が公布、施行されています。これらは近年、中国政府が進める行政改革（所謂「放管服」と呼ばれる、行政手続きの簡素化・許認可管理から期中事後管理への移行）に沿った規制緩和に位置付けられます。
従来は原則、投資を主たる業務範囲とする投資性公司を除き資本金を用いた再投資は認められておらず、再投資を行う際にはあくまでも留保利益を用いる必要がありました。その後、匯発「2015」19号[ii]により、外貨資本金を人民元転後に再投資を使途とする払出しを認めました[iii]。しかし同時に、実務的に容認された事例も見受けられたものの、“直接或いは間接的に企業の経営範囲外の支払いに用いてはならない ”とも定められていた為、経営範囲に“投資”業務が含まれていない、所謂“一般の”外商投資企業（＝以下“非投資性の外商投資企業”に統一）の資本金を使途とする再投資は難易度が高いと考えられました。更に、クロスボーダー人民元による資本金については、従来は後述の通り、再投資を使途とする資本金からの払出しが規定上、認められませんでした。
このような状況の下、2019年に入り先行的に上海自由貿易試験区[iv]等において、更に上記の公布により中国全土にまで規制緩和が図られるなど非投資性の現地法人の活用範囲が拡大している為、その概要を以下に説明します。
１ 匯発［2019］28 号： ⇒外貨を用いた資本金による再投資の許容を明確化
匯発［2019］28 号では、12項目に亘る外貨管理規制の緩和が打ち出されています。既に規定上、非投資性の外商投資企業の外貨資本金を用いた国内再投資が認められている旨は上述の通りですが、今回の匯発［2019］28 号により、以下の要件を満たした場合、外貨資本金を用いた再投資の可能な旨が改めて明記されています。
また、匯発「2015」19号からの変更点として、外貨資本金の再投資に関し、人民元転後の資金だけでなく外貨の再投資についても具体的に規定された点にあり、以下の通りです。
２ 関連規定の説明： ⇒クロスボーダー人民元を用いた資本金による再投資を許容
銀発[2012]165 号[v]（第16条）では、「非投資性の外商投資企業の人民元資本金を国内再投資に充当してはならない」旨が明記されていましたが、今回の関連規定の説明において、商務部公告2013年第87号[vi]で規定する以下の禁止項目に国内再投資が含まれない旨に基づき、クロスボーダー人民元による資本金を用いた再投資が可能との見解が示されました。
尚、上記の施行後、(本稿執筆時点で)既に各々約9か月、約2か月が経過していますが、実務運用においては、金融機関や外貨管理局/中国人民銀行への事前確認等がより望ましいものと考えられます。
[i] 匯発[2019］28 号の原文URLは右記の通り。URL:http://www.safe.gov.cn/safe/2019/1025/14469.html
[ii] 匯発[2015]19号の原文URLは右記の通り。URL:http://www.safe.gov.cn/ningxia/2015/0429/212.html
[iii]当該箇所の原文は以下の通り。
二、外商投资企业外汇资本金意愿结汇所得人民币资金纳入结汇待支付账户管理
资本金账户的支出范围包括：（前略）境内再投资专用账户的资金（後略）。
六、其他直接投资项下外汇账户资金结汇及使用管理
境内机构开立的境内资产变现账户和境内再投资账户内资金结汇参照外商投资企业资本金账户管理（との規定のみ）
[iv] 上海匯発[2019]62 号の原文URLは右記の通り。URL: http://www.safe.gov.cn/shanghai/2019/0717/1097.html
[v]銀発[2012]165号原文URLは右記の通り。URL:http://www.pbc.gov.cn/tiaofasi/144941/3581332/3587000/index.html
[vi] 商務部公告2013年第87号の原文URL及び禁止項目の原文は下記の通り。
URL:http://www.mofcom.gov.cn/article/b/f/201312/20131200426357.shtml
三、外商投资企业不得使用跨境人民币直接投资的资金在中国境内直接或间接投资于有价证券和金融衍生品（战略投资上市公司除外），以及用于委托贷款。