【2016年8月】PE認定課税

2016.08.01

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営業企画部

 さて今回の国際税務通信では、各国進出企業が抱えるPEリスクについて、特に指摘の多い中国の実情を踏まえながらお話しできればと思います。 

 PE(Permanent Establishment、以下「PE」という。)とは「恒久的施設」を指し、(租税条約及び国内法に定める)事業を行う一定の場所がある場合には、各国において課税するという課税上の概念をいいます。また、租税条約は「PEなければ課税なし」ということも謳われており、あくまでも租税条約上では、各国においてPEがあるかないかによって課税の有無が判断されるとあります。

 現地に法人を設けて活動する場合には、当該現地法人がPEとなりますので、例えばPJ(Project、以下「PJ」という。)等の活動拠点が曖昧な場合にはPEに該当するか確認しなければなりません。ここで少し中国のお話をさせて頂きますが、中国ではPJは税務登記をする必要があります。例えば、中国で現在行われているPJに役務を一部提供した場合にも本来は税務登記をする必要があります。これは、PJに役務を提供した場合においても、その役務提供を含めて全体のPJとされるためです。
また、多くの方が勘違いされているのですが、PE認定された場合に企業所得税や個人所得税を支払うのではなく、全てのPJは税務登記をし、中国国内法に従って企業所得税及び個人所得税を支払うとされています。その上で、租税条約に従ってPEではないと考えられる場合には、申告時において租税条約の適用を受ける旨の申請をする必要があります。そこまで行ってようやく、PEはないとされ、晴れて課税はなくなります。
一般的に中国に限らず各国においても租税条約は自動で適用されるものではなく、租税条約の適用を求める申請をすることが必要になる旨を認識する必要があります。

 重要なので繰り返しますと、全てのPJは税務登記(これにより中国国内源泉所得と認めることになる)をし、租税条約に従ってPEでないと主張するのであれば、その旨を申告時に申請する。
※こちらの例は中国の話ですが、基本的には各国においても同様と考えられます。

 次に日本企業はこれに対しどのような取扱いを実際に行っているかというと、基本的に源泉徴収を行っている企業が多いです。本来であれば税務登記をしなければなりませんが、その手続き等の煩雑さを鑑みて源泉徴収で済ましていることがほとんどかと思います。
煩雑さを鑑みて源泉徴収を行っていますが、この所得は事業所得です。現地で事業を行った対価として得た報酬であり、通常の源泉徴収が求められる財産所得(配当、利息、使用料など)とは違います。現地にて事業を行っているということは、その事業収入を獲得するために何かしら従業員も働いているはずですので、個人所得税も現地において支払わなければなりません(現実に源泉徴収されているのは、企業所得税のみ)。
 

 また、租税条約の短期滞在者免税の規定に関しても、PE認定された場合(上記の例でいうと、PJの税務登記をした場合)には短期滞在者免税の要件を満たさないことになりますので、例え183日未満の滞在であったとしても個人所得税は支払う必要があります。 

 PE認定や居住性の問題、VISA、税籍登記、租税条約などは全て連動していますので、全体をしっかりと認識した上で、個々の論点に落とし込んでいただければと思います。