【2025年2月】合法に「リストラ」する方法はあるか?

 

 

合法に「リストラ」する方法はあるか?

 

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近年、日系企業だけでなく、多くの企業が不景気を乗り越えるために、「リストラ」を検討、実施することが増えています。しかし、中国の労働関連法規では、従業員を保護する傾向が強く、リストラに関して明確な規定がないため、具体的にどのような方法で計画、実施すれば良いのか、多くの日系企業が頭を悩ませています。

そもそも「リストラ」という言葉は、あくまで人員削減を指す民間的な呼び方であり、法的な概念ではありません。人員削減を計画・実施する際に最も重要なのは、労働契約法で定められている以下の労働契約解除方法の中から、自社の状況に適したものを選択することが最も重要です。

 

1.労働契約の協議解除(労働契約法第36条)

会社と従業員が合意して、労働契約を解除する方法です。この場合、従業員の同意を得るためには、法定経済補償金(以下「N」と称す)に加え、会社が任意で支払う経済補償金(以下「α」と称す)が必要です。αの金額について、法的規定や政府の指導がないため、会社と従業員との合意によって決定されます。欧米企業では、N+6(ポルシェ社)など高い経済補償金が報道されることがありますが、上海では、N+3前後が一般的な水準になるかと思います。

ただし、会社がN+αの補償金を提示しても、従業員には合意しない権利があります。そのため、より高額な経済補償金を要求する従業員や、どうしても離職に応じない従業員が出てくる可能性があります。このため、協議解除を進める際には次の2つの強制解除方法を念頭に置き、事前準備を進めて従業員に説明することが求められます。

 

2.労働契約締結時の客観状況の重大な変化(労働契約法第40条3項)

一般的に、組織や生産ラインが閉鎖される場合は、法規定「客観的状況の重大な変化」に該当すれば、該当する組織や生産ラインに所属する従業員全員を解雇することが可能です。ただし、日系企業では、「多能工」を推奨し、従業員の所属組織やポジションを明確に指定していないことが多いため、この方法を十分に利用できないリスクがあります。

 

3.経済性リストラ(労働契約法第41条)

労働契約法では、「会社が経営困難や技術革新などの理由で、20名以上、または全従業員の10%以上を解雇する場合、1か月前に従業員に通知し、組合の意見を確認の上、労働行政部門に届出を行うこと」と規定されています。

しかし、実務上は労働行政部門が届出を受理しないケースが多く、経済性リストラを理由に解雇を進める事例は少ないのが現状です。多くの場合、協議解除を利用しつつ、適切な解雇理由がない場合の最終手段として経済性リストラが活用されることが一般的です。

 

会社の経営状況に応じて人員整理を行う際には、上記の理由に加え、人員の選定方法、交渉の進め方、業務への影響を最小限に抑える対策など、多くの課題に取り組む必要があります。最も重要なのは、会社の経営目標の実現です。そのためには、長期的な視点で準備を進めることが求められます。時間をかけることで、労働契約の期間満了による終了や、残業削減による自主退職の促進など、より多くの選択肢を検討することが可能になります。