【2023年10月】兼業を理由に従業員を解雇できるか?

 

 

 

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1 兼業を理由に解雇できるか?

多くの中国人の皆さんは(株や不動産投資を含めれば)何らかの兼業をしています。一方で、多くの会社では就業規則で兼業を禁止しています。「兼業を理由に言うことを聞かないA部長をクビにできるのではないか」と考えたことがある方もいらっしゃると思います。今回は兼業を理由に解雇をした事案を紹介します。

 

2 事案

2017年2月28日、周氏はアパレル会社に入社し、労働契約の期間は2017年2月21日から2020年2月20日まで、仕事は人事担当を務め、月額賃金は4,800元でした。会社の「就業規則」には、「従業員が次のいずれかに該当する場合には、会社は、いつでも、補償なしに労働契約を解除することができる。」「従業員が同時に他の会社と労働関係を構築し、有償または無償で兼業をすること」と規定しています。

2018年5月7日、会社は周氏が雇用契約を締結しているにもかかわらず、兼業の代理購入をしており、これが会社の規則違反であることを理由に労働契約を解除しました。

周氏は2018年4月22日から4月28日までの間、WeChatのモーメンツ(タイムライン)において韓国商品の代理購入のために韓国に行ったことなどを投稿しました。周氏は上述のモーメンツの内容を認めましたが、(商売としての)代理購入はしておらず自分の利益を図っていないと反論しましたが、会社はこれを証拠として兼業を行っていたと認定しました。

 

3 判断

2018年9月、周氏は北京市西城区労働人事紛争仲裁委員会に仲裁を申請し、会社に違法労働契約解除賠償金14,775元を支払うよう求めました。

2018年12月12日、仲裁委員会は、違法解除であると認定しました。この認定に対し、会社は仲裁裁決を不服として、裁判所に上訴しました。

一審裁判所は、周氏が他の会社と労働関係を構築し、有償または無償の兼職に従事したことを証明することができておらず、代理購入を理由に労働契約を解除する根拠が乏しいとして解雇は無効と判断しました。会社は二審裁判所に上訴しました。

二審裁判所は、労働事件においては、使用者が労働契約の解除、労働報酬の減少、労働年数の計算などの事実について立証責任を負うところ、会社が提出した証拠は周氏が代理購入に従事したことしか証明できず、周氏が「従業員が同時に他の会社と労働関係を構築し、有償または無償で兼業をすること」を証明することはできていないため、周氏との労働契約を解除する事実の根拠は乏しく、解雇は違法無効であり、二倍の経済補償金を支払うべきであると判断しました。

 

4 実務上の留意点

労働契約法39条4号は「労働者が同時に他の使用者と労働関係を形成し、本使用者の業務任務の完成に甚だしい影響を与えたか、又はそれを使用者が指摘しても是正を拒否した場合」に解雇ができると定めていて、それとのバランスを取ったものと思われます(今回は就業規則の重大違反を理由にした解雇)。本件は、どう考えても代理購入をしているとしか思えない事案なのですが、裁判官が多目に見たものと思われます。裁判官も兼業をしている可能性もありますから、なかなか兼業のみを理由にした解雇は難しそうです。

 

案号:(2019)京02民終5861号