【2023年5月】応募者に結婚状況を聞いたら、違法!??

 

 

 

PDF版はこちら → 人事労務通信 2023年5月号

 

ほとんどの会社が人材採用する際、応募者から提出される履歴書の中に「婚姻状況」や「子供の有無」の記入欄がもうけられています。ですが、これだけで、違法行為にあたると、最近の法律では定められています。

2023年1月1日から「中華人民共和国女性権益保障法」が施行されました。その第43条では、雇用会社の義務について、以下のように定めました。

 

「第43条 会社は従業員を招聘、採用する際、国家が別途規定する場合を除き、以下の行為をしてはいけない。

  1. 男性に限定、または男性を優先する;
  2. 個人情報以外に、女性応募者の結婚生育状況を確認、調査する;
  3. 妊娠テストを入社健康診断の項目とする;
  4. 結婚生育を制限、或いは結婚生育を採用条件とする;
  5. その他、性別を理由として、女性の採用を拒否、或いは女性採用の基準を差別化する。

 

確かに、一部企業は女性従業員の生育休暇を回避するため、「既婚未成育者」の採用を拒んできました。これを是正するために、2019年から、当該採用差別行為を禁止すると、複数の省令が出されました。特に、近年中国の労働人口が減少し続け、2022年度、初めての人口負成長に転落しました。より多くの女性に、仕事と生育を両立させるために、上記法律が導入されたと考えられます。

 

ただし、上記法律規定では曖昧な部分が残ります。「結婚生育状況の確認、調査」は、具体的にどのような行為を指すか、明確な説明が欠如しています。現時点の裁判事例を見ても、履歴書に「結婚生育状態」を応募者に記入させることで、違法と判断されるケースは、まだありません。状況が不明瞭の中、会社が女性従業員を面接、採用する際に、以下のことを考慮、注意したほうが望ましいと考えられます。

 

  • 裁判事例や法律細則ができるまでに、履歴書から「結婚・生育状況」を削除する必要は特にない。しかし、応募者が記入を拒む場合、それ以上追及しないことが望ましい。
  • 従業員に不採用の理由を通知する際、性別や結婚・生育の有無を理由にしないことを、注意する必要がある。
  • 応募者が履歴書の「結婚・生育状況」について、偽りの情報を提出する可能性がある。入社した後、真実を知った会社が、規律違反を理由に、当該従業員を解雇することが多い。ただし、最新の判例では、会社の解雇行為は違法だと認定している。その理由も、上記「中華人民共和国女性権益保障法」で結婚生育状況の確認調査は違法だと規定していると、裁判所が説明している。

 

日系企業は、採用時に応募者が業務に相応しいかで判断し、性別や生育を理由に、不採用と判断することは比較的に少ないと考えます。ただし、政府の宣伝を通じ、「結婚・生育情報はプライバシーである」ことが、社会の一般認識になると思います。会社がトラブルをできるだけ避けるためには、新しい考え方を管理方法に取り入れ、準備する必要があります。