【2023年2月】コロナ日常化の労務管理対応策について

 

 

 

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中国は「ゼロ・コロナ対策」を約3年間実施してきました。去年12月に、従来の厳格なコロナ管理体制が緩和され、感染者が一気に増加しました。多くの会社では、8割以上の従業員が感染され、正常な経営活動が阻害されてしまいました。さらに、2023年1月8日から、「乙類乙管」に切り替え、コロナを一般伝染病として定義し、特別な管理方法は撤廃すると法改正されました。

「乙類乙管」への切り替えに伴い、労務管理で最も大きい変化は、「感染者に対し、100%の給与支給」が中止され、病気休暇給与の支給ができるようになりました。これで、会社の負担が一部軽減されたと考えられます。ただし、コロナ対策が緩和されても、コロナという伝染病の威力が軽減されたものではありません。今後、感染者の欠勤で、会社の日常業務が影響される可能性が残されています。さらに、管理制度が不十分の場合、会社人事労務管理の公平公正が損なわれるリスクも考えられます。以下、考えられる事項を検討させていただきます。

● 病気休暇の申請方法

ほとんどの日系企業の就業規則では、病気休暇を申請する場合、2級以上病院が発行する病気証明の提出が規定されています。ただし、コロナ感染者に対し、政府は在宅の療養を推薦し、病院での診断を避けるよう、アドバイスしています。このため、従業員が感染で休暇を申請する場合、就業規則で定められる病気証明を提出できない可能性が考えられます。

22年12月から、PCR検査陽性反応を証明する写真をもって、休暇を申請する会社が多かったです。1月8日以降でも、同じ方法の利用が考えられます。ただし、病院発行の病気証明と比較し、自宅で実施するPCR検査の信憑性がどうしても弱いため、虚偽の休暇申請が出てしまう可能性が考えられます。このため、休暇申請のため、自宅で実施されるPCR検査結果に加え、医療機関が実施する核酸検査結果の提出を要求することが、検討できます。

● 職場復帰の判断

従業員が感染した場合、何日の病気休暇を与えればいいか、問題が残ります。現在、以下の場合に従業員に職場復帰を要求する会社が多いです。

1)PCR検査で陰性が出た場合

2)熱が下がり、出勤できる体調になったと従業員が判断した場合

上記いずれの条件も、明確な証明がなく、従業員の適切な報告に頼っています。会社業務に対する影響を最小限に抑えるため、陽性判明日から4日の休暇を与えるが、それ以上休む場合、病院発行の病気証明が必要だと、規定することが考えられます。

● 家族に感染者が出た場合の対応

コロナが最も恐ろしいのは、その感染力です。同居家族が感染すれば、ほぼ80%以上の確率で感染してしまいます。従業員の同居家族が陽性になった場合、出勤させるかどうか、悩まれます。休暇を与えると、何日休暇が妥当か、他の出勤する従業員との公平性も保ちにくくなります。逆に出勤を要求すると、他の従業員が心配で、業務に影響してしまう可能性も考えられます。

現在、同居家族が陽性の場合、有給休暇や私事休暇として処理する会社が多いです。

 

今後、コロナと長く付き合っていくと考えられます。感染された従業員、出勤する陰性の従業員、会社の業務遂行、複数の面から、バランスが取れた処理方法を決める必要があります。