【2020年9月】人材採用と組織風土

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経営コンサルタントの谷です。以前の人事労務通信で「ネットによる直接募集」という採用方法についてご案内いたしました。結構な数の企業様からご照会をいただきましたが、「関心はあるけど、結局導入はできない」という企業様もまた、相当数にのぼりました。

理由は、(1)中国人の人事担当者が反対しているから、というものが一番多く、次いで(2)過去にもネットに出稿したけど失敗した(ロクな応募がなかった)から、でした。

うーん、と思ってしまいました。

1)には、「自分が今までやってきた仕事の品質を否定される(外部代行されて成果が出たらメンツがなくなる?)」「紹介会社との関係が壊れる(バックマージンでも貰っているのでしょうか?)?」「単純に今、自分がやっている仕事を獲られると困る?」等々の考えがあるようにも思われ、そういうマインドの人事担当がいらっしゃる会社の組織は良くならないだろうなあ、と心配になります。

2)は、典型的な「過去の体験によって強化された確証バイアス」で、次の意思決定ができなくなる状態ですね。人は1の損失を、1の利得の3倍嫌がるのだそうですが、成功する企業は、10回の失敗のうえに1回の成功を築きます。強化されたバイアスは、それでなくても嫌な損失を、3倍どころか何十倍にも過大評価してしまう、という非常にまずい体質です。こうなると「新しい環境」に適応することが極めて難しくなってしまいます。

さて、セミナーなどでもよくお話しさせていただくのですが、「採用とは、共に働きたいと思える仲間を探し、説得する仕事」です。そのため、採用担当者が上記のような体質(考え方、仕事の仕方)だと、同類の人材ばかりを採用することになります。採用面接を総経理が自分で行っていらっしゃったとしても、そもそも一次スクリーニング段階で、自社に本当に欲しい人材は集められていない可能性も高い。

海外(中国)まで出てきて、企業間競争に勝とうとしている皆様ですから、日本国内に留まっている企業と比べれば、ずっとアグレッシブなマインドの社員が集まっていて然るべきかと思うのですが、悲しいことです。</p >

では成長を目指す企業は、どのような人材を「採用すべき」なのでしょうか。

1.   中期事業戦略を実現するために必要な資質(現在能力ではない)を備えた人材。または1年~数年掛けて、経営が求めるレベルに到達すべく成長を続ける人材であること

2.   組織としての望ましい「文化」を共有できる人材であること

3.   既存人材の「常識」を打破し、新しい知識や考え方を持ち込んでくれる人材であること

等々が思い浮かびますね。

そして、企業が成長発展するために加えて大事なことは、「既存社員よりもポテンシャルが高いこと」だと、私は考えています。勿論、既存社員にだって、これからどんどん成長してもらいたいのですが、企業が現在のステージより、もう一段高いレベルへと上がっていくためには、自分たちよりも優秀(何をもって「優秀」とするかは明確にしておく必要がありますが)な人材に来ていただくことを歓迎する風土が不可欠です。

本レターをお読みいただいている皆様の会社では、是非そんな風土を作り出しつつ、積極的に次世代の人材を採用/育成して、これからますます厳しくなるであろう環境に負けることなく、共に成功、成長を掴んでいきましょう!