【2018年9月】人事制度の3要素

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経営コンサルタントの谷です。人事をご専門にされている方にとっては基本的な知識になってしまい恐縮ですが、今回は、以下3項目の人事制度の基本構造についてお話したいと思います。

1. 職種と階層

2. 評価の項目と基準

3. 賃金、処遇体系

当社では「人事制度がないので作って欲しい」という引き合いを数多くいただきます。それでどのようなものを必要とされているのか詳しくお聞きすると、「メリハリのある処遇にしたいので、そういう給与計算ができる仕組みにしたい」と言われることが結構頻繁にあります。そして「評価制度は後でかまいません」と。

このように堂々と仰っていらっしゃいますと、面と向かって「それは何か勘違いされていますね」とも申し上げにくいので、そこからのお話の進め方に苦労します(笑)。

言うまでもないことですが、社員が納得できる評価があってこそ、メリハリをつけることもできます。全員が同じ仕事をしているわけではありませんから、納得できる評価をしようとすれば、仕事の種類ごとに評価項目や基準を決めなければなりません。そのためには職種設定、階層設定を適切におこなって、自社で行われている仕事を整理し、どういう仕事の価値が高いのかを整理するべき、ということになります。

それなのに「賃金テーブルと昇給ルールだけを先に作って欲しい」と言われる会社様は、少しきつい言い方になってしまいますが、「カネさえ払っておけば人は働くものだ」と思っておられるのかなあとさえ感じてしまいます。

さてここまでは世界共通。では、中国で制度作りをするときに必要な視点はなんでしょうか?

まず職種設定では「社員のメンツが立つように」。会計資格を持った経理マンと運転手さんを同じ職種にしてはいけません(日本ではままあります)。階層設定では運用上支障のない範囲で細かく刻むこと。ある会社で4階層(一般、中堅、管理、経営)にされている制度を見たことがありますが、お聞きするとやはりモティベーションが上がらなくてお困りでした。キャリアアップの目標が見えにくくなってしまうのですね。 

評価項目設定は会社の人事ポリシーに基づいて設定されるべきなので、中国だからと特別なことはありません(人事ポリシーについてはまた別の機会に!)。各項目に点数をつけるための基準設定では、日本との文化の違いということをよく考えて、極力主観を排した表現、できれば数値で表せるとベストですが、そうでなくてもOKNGかが分かりやすいように記述してください。とは言え具体的な業務内容に個々に踏み込んでしまうと複雑になりすぎて制度として成立しなくなる懸念が高まりますから、その場合は部門ごとにガイドラインのようなものを別に作る必要も出てきます。

最後に賃金ですが、「差」を思い切って付けること。日系企業の苦手な部分ですが、ちょっと評価の低い社員の給料が上がらなくて、それが元で辞められたら困る。。。というような理由で、ほとんど差を付けず、評価によらない一律昇給なんてことをされる会社まであります。これをやると優秀な人材から順番に辞めていきます。会社として優秀な人材を残したいなら、そうでない人が辞めるリスクを引き受けることが必要です。両方にいい顔をしようとするのは、少なくとも人事制度という視点ではほぼ不可能です。