【2017年12月】報奨制度の設計と運用

 

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 経営コンサルタントの谷です。2017年もまもなく終わり。忘年会では1年間の頑張りを労って、従業員の皆さまに報奨金などをお渡しされる企業も多くあろうかと思います。中国人社員に限らず、どこの国の人でも自分の仕事を褒められるのは嬉しいものですが、報奨は上手にやらないと逆効果になることもあるので気を遣いますね。

 報奨制度を設計する時に気をつけることは、次の3項目です。

 

  報奨されて然るべき人が、然るべき理由によって報奨されること

  現金による報奨だけでなく、記憶に残る経験を組み合わせること

  社内外に向けた発信をおこなうこと

 

 まず第一点目。報奨制度には、配分的正義と手続的正義が必要であり、「ただの依怙贔屓」などと思われてしまうと完全に逆効果になります。また「総経理賞」のようなものだと、総経理が独断で決めて良いというニュアンスが強くありますが、仮に独断であってもなぜその賞が与えられたのかという、明快かつ社員の大多数が納得する理由説明が必須です。その理由に対して、「だったら私の方が余程」とか「なんだ、そんな程度で」などという声が裏で出てくることのないよう、発表前には、その対象者で間違いがないかきちんと確認しましょう。報奨理由についても、従業員に対する絶好の教育機会と捉えていただき、皆が得心のいく説明をしっかりと行っていきましょう。

 二点目ですが、報奨は「現金」で渡されれば確かに対象者は喜びますが、ただ現金だけではモティベーション効果は長期に持続することはありません。後々まで報奨されたときのことを思い出し、誇らしく思えるような経験にしてあげることで効果が何倍にもなります。全社員の前で発表する、などはよく採用される方法ですが、発表・表彰時の演出も重要です。ただ絢爛にすれば良いというわけではありませんが、報奨を受ける方は当然この1年間に相当な努力をしています。その努力を例えばVTRなどで映像化し、泣かせる演出をされるような企業様もあります。これに加え、家族を招いて本社役員
との会食を行う、日常的に身につけられるようなアクセサリーなど(ダサいのはダメです)を副賞にする、プレートを作って本人に渡すだけでなく、オフィスにも掲示するなどの方法があります。
 

 最後の発信は、社内向けには上記の「記憶に残る経験」と方法としては被る部分もありますが、これを更に拡大し、お客様やお取引先様にまで告知していくこともお勧めです。自社における重要人物として認識されていることを社外の方にまで知っていただければ、「自分は会社を代表する人材なのだ」という自覚が生まれます。また、今回報奨を受けられなかった大多数の社員にとっては憧憬の対象となり、後に続く人材のロールモデルとして、我が社で賞賛を受ける行動や成果を具体的に見せられるという効果があります。

 こうして設計された報奨制度は、給与の一部である賞与とは明らかに別の性格を持ちます。インパクトを持たせる意味でもそれなりの金額を供出されることでしょうし、報奨を受けた人にとっても受けられなかった人にとっても、意味のある制度にしていかなければなりません。単に受賞者の経済的なメリットを強調して終わり、というような運用にならないよう、制度設計も勿論、運用する場面での丁寧で細やかな対応、また他の制度や報奨後の通常業務との結びつけなども強く意識して実施いただければと存じます。