【2016年3月】「評価者訓練」実施における注意点

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経営コンサルタントの谷です。今回は人事制度運用の鍵を握る「評価者訓練」についてです。


人事評価においては、直属上司が一次評価を行い、二次評価を経て、総経理が承認するというやり方が多いと思いますが、総経理は全社員の日々の働きぶりや発揮能力の詳細までは当然わかりませんので、一次二次段階でいい加減な評価が行われてしまうと、正しい評価結果が出せない、ということにもなり兼ねません。

A部長は全体に評価が甘いがB部長は辛い。C部長は業績の良い部下を高評価するが、D部長は自分の言うことをよく聞く部下を高評化する等々、評価の現場には様々なバラつきが発生します。勿論、人間のやることですから常に100%完璧にできるわけはなく、多少のエラーがあることは織り込んだ上で、人事部や経営陣がそのエラーを可能な限り補正し、制度が目指す効果を出せるよう運用する仕組みにはなっているはずです。とは言え、機械的な補正をするとまた別の問題が出ることもあります。

そこで、評価者たちによる評価基準の解釈で発生する誤差を、せめて補正が可能な、もしくは我慢できるレベルの差にまで揃えるという作業が必要になります。これが評価者訓練です。普通の知識研修や技能研修などと決定的に異なるのは、「評価のバラつきを抑えること(目線合わせと言います)が主眼」ということで、参加者の80%がよく理解してくれたから合格というものではありません。

一般的に、人事部主導で策定される評価基準は、出来る限り定量的な記述を優先し、どうしても定性的に記述せざるを得ない項目でも極力誰が読んでも同じ評価になるようにと推敲が重ねられています。にも関わらず、これを実際に使う評価者たちの中には、記述を読みもせずに、「こいつは良くできるから5点!」とか、「今期クレーム出したから、全項目3点以上は付けない!」とか、無茶なことをしてくれる方がいます。私が過去に経験した研修では、ある受講者に、「私は5点は付けない主義です」と言われて大いに驚いたことがあります(今なら驚きません。そういうこともあるのです)。

マネージャとして部下育成における考え方には個性があるべきですし、多様な人材を育成していくことは経営的には必須とも言えます。しかし、人事評価は違います。これはひとりひとりの社員の給与、ひいては家族の皆さんの生活にも直結する大変に重い査定です。たまたま配属された上司の勝手な主義で高得点を貰えないのでは余りにも気の毒です。

一方、マネージャの立場では、一定の評価基準が全社共通で提示されているとは言え、実際に各現場で行われている業務はそれぞれ違いますし、被評価者ひとりひとりが行っている行動も違います。制度で示された基準に当てはめにくいという声が出ても当然のことです。

そのため評価者訓練の場では、実際にどのような事象が現場にあるのかをお互いが紹介し合い、それぞれの場合に、それは何等級社員のどの項目の何点に該当するのかを討議してもらいます。時間を掛けて徹底的にやれば、現場での評価ガイドラインが完成します。そこまで作れなくても、他の評価者との違いを自覚することでバラつきを抑える効果が出ます。更には、この討議を観察することで、どの評価者がどのような評価傾向を持っているかを、人事部が理解する(補正の際に役に立つ)という効果も出てきます。

貴社の評価者訓練では、効果的に目線合わせ作業を行えておりますでしょうか?もし具体的なやり方をお知りになりたい方は是非お問い合わせください。ではまた次回!