【2016年2月】女性保護規定について

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1  日系企業としての取組について
  中国政府は正式にいわゆる「一人っ子政策」から「二人っ子政策」に転換することを表明しました。今後日系企業においても、女性保護の労働関連法規の適用について悩む場面が増える可能性があります。どうしても経営者層の立場として は、一時的な戦力ダウンや増加するコストに目を奪われがちですが、優秀な人材を採用するために、むしろ女性の福利厚生について充実させるなどの対策を取る必要があります。とはいえ、三期中の女性保護については悩ましい点も多いのは
確かです。今回は三期期間中の女性従業員の解雇規制について説明したいと思います。

2  三期(妊娠、出産、授乳)期間中の女性従業員の保護

(1)三期期間中の解雇の禁止
三期とは妊娠、出産、授乳の各種期間を指し、三期期間は妊娠日から起算し、授乳期は子供が満1歳までとなるため、前後して合計約1年10か月間となります。労働契約法第42条により、三期期間中は、妊娠、出産、授乳を理由とした解雇が禁止されています。


(2)三期期間中の解雇禁止の例外
① 合意解除
三期期間中であっても、労働契約の合意解除は可能です。三期期間中に退職してもらう場合は、解雇、契約期間満了による退職扱いにはできませんので、話し合いで合意解除を目指すことになります。ところが、合意解除書を締結した後に女性側から実は当時妊娠2ヶ月であり、合意解除は無効であると主張される可能性があります。つまり、自分が妊娠していることが分かっていれば、このような合意退職条件で退職することはなかった、もっと自分に有利な条件で退職することができたと、合意は錯誤により無効であると主張する可能性があります。
この点については、裁判例はケースバイケースで判断が異なります。こうしたリスクを避けるために、合意書にはいかなる事由があっても合意内容を覆すことはできない旨定めておく必要があります。


② 能力不足を理由とする解雇、リストラ解雇、即時解雇
三期期間中は能力不足を理由とする解雇、労働契約法第41条によるリストラ解雇はできませんが、労働契約法第39条にもとづく即時解雇(日本でいう懲戒解雇)を行うことは可能です。三期期間中は何があっても解雇できないと誤解されている場合が多いのですが、勤務態度が不良であったり、重大な服務規律違反を行なったり等の即時解雇事由があれば、三期期間中であっても即時解雇は可能です。


③ 会社清算を理由とする解雇
三期期間中であっても会社清算を理由とする解雇は可能です。清算の場合は会社の存続自体が無くなるため、三期期間中の保護の例外と解釈されています。


④ 期間満了による契約終了
妊娠が分かり、今後の人員体制を考えると雇用し続けることはできないと判断し、期間満了により退職扱い(解雇ではありません)をする事例があります。
労働契約の期間満了時に三期期間中にある場合は、労働契約を終了させることはできず、三期期間の終了時まで契約期間が自動的に延長されることになります(労働契約法第42条、第45条)。
なお、期間満了通知をした後に、女性側から実は妊娠していたことが後から判明し、期間満了通知扱いは無効であると主張されることがあります。この場合は事実を優先して期間満了通知扱いはできず、雇用期間を延長しなければなりま せん。三期期間中であるにもかかわらず期間満了通知を行い、退職手続きを進めた場合は違法解雇扱いになります。この点は注意が必要です。