【2016年1月】合法的に減給・降格・降職を実施できるか?

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 今回は少しデリケートなテーマを取り上げさせていただきました。 

 多くの会社で「就業規則」や「人事制度」に、規律違反や評価の低い従業員に対する、減給・降格・役職罷免等の処分規程を定めていますが、運用上、違法リスクが高くなりやすいために注意が必要です。中国の労働関連法律では、従業員との協議一致に基づき、従業員が就業規則などの規定に違反した場合、または、労働契約法第40条3項で定める事由が発生した場合、減給・降格・役職罷免ができると規定しています。しかし実際には、会社が減給などをすると、従業員が給与の未払いを理由とした仲裁や裁判を起こし、会社が負けてしまうケースが多く見受けられます。

 とはいえ、これらの処分を実施できないと、規律違反をするような不適格な従業員が保護され、結果として能力・業績以上に高い給与や役職が適用され続けることになります。同時に優秀な従業員に対し、高い待遇が適用できなくなるため、モチベーションが上がらず、会社全体の戦力が抑えられてしまいます。

 「出来ない従業員に適切に対処し、出来る従業員を厚遇する」という会社のあるべき姿を実現するために、減給・降格・役職罷免は必要不可欠な手段であり、これを全従業員に納得させ、違法リスクを軽減するためには、以下のアプローチが考えられます。

1.給与構成・定義を労働契約で明記
従業員の給与は、基本勤務に対応する基本給、管理役職に対応する役職給、獲得実績に対する業績給など、多くの部分から構成されますが、それぞれの構成部分は、どのような要件を満たせば変更できるか、労働契約書や他の契約で明記をしてください。例えば、基本給と役職給を別々で設定し、役職の任命とともに役職給が支給され、役職が免ぜられる際には支給中止する、などと明記しておくことが最低限必要です。

 

2.規程、制度の整備
減給・降格・役職罷免を実施する際、明確な変更管理方法や制度があれば、ある程度違法リスクを回避できます。例えば、個人業績や担当業務での達成すべき状態などを指標化することで、これに連動させ、業績給を増減させることができます。ただし、指標は客観的なものでなければならず、主観的な上司評価は避けるべきです。

3.日常の従業員フィードバック強化と証拠の収集
契約と規程、制度の内容は、従業員に正しく理解させ、遵守させなければいけません。一度の説明で浸透させることはなかなか難しいため、日常の従業員フィードバックとして、会社・上司の考えを繰り返し伝えることが重要です。特に、
従業員の行為が会社の要求に合致しないときや、個人業績目標が達成できないときなどは、適時注意や支援がなされること、また定期的に個々の総括をしてあげることで、仮に処分がなされても、従業員として納得しやすくなります。同時に対象となる行為や業績結果に関する客観的な記録を残しておくことで、仲裁や裁判になっても、会社に有利な証拠として活用できます。
 

 以上のアプローチを通じ、従業員の担当業務範囲と実現すべきレベル、達成すべき業績についての合意を形成し、各従業員が自分の担当業務に責任を持つ会社カルチャーを構築し得れば、減給・降格・役職罷免が従業員に当然のこととして理解されるようになるでしょう。