2016.01.01
営業企画部 片瀬陽平
コラム第11回目
中小企業の社長と話をすると「海外進出したいがどのようなリスクがあるか分からないために進出することが難しい。」このような声を聞くことが度々あります。今回のコラムの内容はこのリスクについて少しお話ししようと思っています。
新たに事業投資を行う場合には、必ずリスクがついてきます。ただし、上記のように中小企業の社長はそのリスクが分からないといいます。なぜでしょうか。それは、リスクはそこに必ずあるものでありますが、リスク要因も含めてリスクとはその定義が確立したものではないためです。為替リスクや信用リスク、カントリーリスク、商品リスクなどよく聞くリスクについてもその内容は案件ごとに大きくことなることになります。
そこでまず大切なことはビジネスのスキームをしっかりと作ることにあると思います。プロトタイプ化が困難なリスクというものと向き合うためには、自社が何をしたいのか?何をするべきなのかをとことん追求しなければなりませ
ん。リスクというレバレッジがあるために、リターンが得られるということを聞いたことがある方も多いのではないかと思いますが、リターンはリスクと直接紐付くものではなく、リターンはビジネスと紐付くものであるとまずは認識してもらいたいと思います。
まずはビジネスが大切ということを認識してもらった上で、リスクの種類をお伝えしようと思います。リスクには、財務関連リスクと非財務関連リスクに分類することができます。
【財務関連リスク】
・為替リスク
・信用リスク
・コモディティリスク
・資金調達リスク
・その他のリスク
【非財務関連リスク】
・カントリーリスク
・市場リスク
・規制緩和/強化リスク
・法律改正リスク
・パートナーリスク
・その他のリスク
これらのリスクが一般的なものとして列挙され、各社これらのリスクを定量化すべく取り組んでおります。ただし、リスクの定量化に関しては非常に難しく、中小企業が事業価値の不確実性に着目し、企業の経済価値の発生しうる最大の損失額をリスクアセットとして認識することは正直難しいものと思います。
そのために中小企業がこの不確実性を取り込むためには、保守的な中期事業計画を作成しDCF法により現在価値に割引き、投資額と当該現在価値を比較し、投資の最終判断を行うべきであると考えます。
その保守的な判断のために上記のリスク項目(財務リスク及び非財務リスク)を確認し、どのようなことが起こる可能性があるかをしっかりと認識する必要があります。リスクの定量化に注目するのではなく、事前にどのようなことが起こ
るかを予見し、それが顕在化した場合の対応方法に関してしっかりと事前に確認することが必要になるかと思います(中小企業は海外進出際にはしっかりとしたフィジビリティスタディを行うことがとても大切です)。