【2015年12月】海外子会社に対する貸付金の金利

2015.12.01

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営業企画部 片瀬陽平

 さて、国際税務通信の第6回の今回は「海外子会社に対する貸付金の金利」についてお話ししようと思います。親会社からの資金調達の方法としては、出資による調達や親子ローンによる調達などが考えられますが、出資による調達に比べて親子ローンによる調達は、新興国において主に以下の点で有利になることが多い現状があります。

①減資が難しい(できない)国が多い

②貸付金利息は損金算入することができる(配当は課税済み利益の還流)

 そのために本日は親子ローンに関する事業資金の貸付利息を主な論点としてお話ししようと思っています。それでは下記の概要をご覧ください。

<概要>
1.日本本社はメキシコ子会社に対して事業資金をペソ建て、返済期限5年間で貸し付けを行っている。
2.メキシコ子会社は借入金総額の5%をペソ建てで日本本社に支払っている。
3.日本本社は日本の銀行から資金の借り入れを行っているが、当該借入金の金利は5%である。
4.メキシコ子会社に業績悪化の事実はない。
5.メキシコ子会社は資本金の3倍を超える借入は行っていない。
※上記利率は概算の利率であり、実際の利率とはかい離する可能性があります。

<解説>
親子ローンに関する主な論点は利息に関する移転価格(メキシコの様に国によっては過少資本税制についても注意)となるために、上記の概要では貸付金金利5%が独立企業間価格として適切か否かが問題となります。

移転価格税制においては次の様に貸付金利の検討を行います。
①実際の取引金利:原則的な方法
②市場金利:借手の銀行調達利率による方法
③市場金利:貸手の銀行調達利率による方法
④市場金利:国債等の運用利率による方法
※優先順位は番号順

 移転価格税制では、国外関連者間取引には独立企業間価格が求められているために、貸付金金利についても独立企業間の独立した条件で貸付が行われた場合の利率によることが求められます。ただし、内部の非関連者間取引(独立企業間の
取引)は多くないことから、情報が取りづらい可能性もあります。その場合には、上記の具体例のように市場金利を使った方法を検討することとなります。銀行からの調達利率の情報等もえることができない場合には、国債等の運用利率による方法を検討することとなりますが、客観的ではないために優先順位は低くなります。

 なお、貸付期間や貸付の通貨によって利率は変わる場合がありますので、独立企業間の金利が一概にいくらであるということは難しいですが、国債の利回りを下回る場合などは移転価格の問題が生じる可能性があるために十分注意する必要
があります。