事業再編の場合、持分譲渡がよく活用されます。持分譲渡される法人の出資
者以外は何も変更がなく許認可事項の再取得が不要であるなどのメリットが
あります。
持分譲渡を実施する場合、譲渡益に対し課税されますので、事前に注意する必
要があります。持分譲渡契約に記載する譲渡価額は、出資当時の資本金額より
少ないのに、なぜ税金を支払わなければならないのか、という疑問もよくあり
ます。中国の税務上の譲渡益の計算方法を紹介します。
譲渡益=(A)譲渡収入-(B)譲渡原価
計算結果がマイナスとなる場合、税額は発生しません。
(A)譲渡収入
① 持分譲渡契約書に記載される譲渡価額
② 譲渡基準日の持分譲渡対象会社の持分の時価評価額
のうちいずれか高い額が税務局より認定されます。時価評価額について、税務
局は、中国の資産評価師事務所が発行する資産評価報告書に記載される評価金
額を採用します。特に、土地使用権や建物を保有している会社の資産価値の評
価益も譲渡収入の一部と見なされ、課税対象になります
(B) 譲渡原価
通常は、会社設立の時の出資した資本金額です。
買収で獲得した持分は買収の時に支払った金額を譲渡原価とすることが可能です。
その際、買収当時の契約書、譲渡益に対する納税証明書などの資料を税務局へ提
示する必要があります。
計算例
① 2002年設立された製造会社、資本金300万米ドル、土地使用権と建物を保有。
② 譲渡割合:30%、譲渡価額:90万米ドル、譲渡基準日:2015年3月31日
③ 会社の純資産額:2,100万人民元( 2015年3月31日の財務諸表より)
評価益:500万人民元(資産評価報告書(3月31日)上に発生していました。)
譲渡益= 譲渡収入③ - 譲渡原価①
(2,100万人民元+500万人民元)/6.2(直近のレート)×30%-300万米ドル×30%
= 35.81万米ドル
上記のように評価益も譲渡収入とみなされますので譲渡金額は90万米ドルでも、
譲渡益は「ゼロ(90万米ドル-300万米ドル×30%)」にはなりません。
譲渡益に対し企業所得税(税率は10%)が課税されることになりますので、譲渡価
額を決定する前に、納税額を試算する必要があります。
また譲渡手続上、資産評価報告書の発行は約1ヶ月を要することも考慮する必要があ
ります。