[2015年6月]人事制度不備のために負担している見えないコスト

 

jinjiroumu_rogo.png

 

 

jinjiromu1506_1.png

 

 経営コンサルタントの谷と申します。マイツグループではこの度、人事労務の専門
コン
サルティング会社「上海邁伊茲蘭璽人材咨詢有限公司」を設立いたしました。
先月の人事労務通信で登場しました労働問題専門の向井弁護士が総経理に就任し、
人事制度を得意とする谷も董事に入らせていただきました。「人」に関する課題をあ
らゆる角度から扱って参りますので、よろしくお願い致します。


 さて今回は「人事制度がない(不十分である)と何が困るのか?」についてお話し
ます。当然、従業員のモティベーションを維持するためにも、処遇を客観
的に公平に
行う上でも必要ですよね、という話なのですが、経営サイドから見ると、外部に頼ん
でもお金がかかる、
内部に専門家を置くのも大変、ということで、特に中国では人事
を後回しにしてしまわれる会社も多いようです。
 コンサルの実感としては、よい人事政策を打てている会社と業績の良い会社は中期
的に一致するのですが、その理由を分かりやすく数字で表せないかと考えて、以下試
算してみました。試算の前提条件は、従業員100名、平均人件費5,000元/月、労働分
配率50%としました(かなり控えめです)。

jinjiromu1506_2.png

 

①採用ロス:不公平な処遇をする会社にはいたくありませんから、人事が不備な会社
では辞める人が多くなります。そうなればまた採用しなくてはなりません。年間10人
離職者がでるとして、2人しか辞めない会社と比べると毎年8人分の採用費(1人1万元
として8万元)が余計に掛かります。総経理や幹部社員の面接時間や人事の事務処理
時間も考慮すると、200万円以上のコスト増となっています。


②育成ロス:教育にかかる費用の話ではなく、新入社員が仕事を覚えるために必要な
時間と、それを教える人の業務効率の低下のことです。それなりに仕事を覚えた社員
8人が新人に入れ替わり、仮にキャッチアップに2ヶ月掛かるとすると、その間の本来
のパフォーマンス(付加価値)は労働分配率の逆数で10,000元になりますので、本人
のその間の効率低下を仮50%、指導担当者8人が指導のために10%の効率低下を起
こすとすれば、(10,000元?8人?50%+10,000元?8人?10%)?2ヶ月分で、10万
元(約200万円)の逸失利益ということになります。


③現地化の遅れ:今、日系企業では盛んに「現地化」という声が聞かれます。が、現
地人幹部がなかなか育たない、ちょっと育つと辞めてしまうという状況だと日本人駐
在員を帰任させられないということが続きます。育成ができていれば日本人ひとりで
済むところが、現状3人置いているなんて会社は、2人分が過剰です。優秀なローカル
幹部との差額(給与だけでなく、経費、帰省費用など諸々)は約1,000万円になります。


④業務パフォーマンスの低下:全社員の優秀な上位2割は状況に関わらず高パフォーマ
ンス、下位2割は常に発揮能力が低いと言われます。そして真ん中の6割の人材は、
処遇が公平でないと感じることでテキメンにパフォーマンスを落とします。この効率
ダウンを2割として10,000元?20%?60人?12ヶ月=144万元(3,000万円弱)の
逸失利益となっている計算です。


 如何でしょうか。人事がうまく機能していない100人規模の企業で、毎年4~5千万
円くらいの利益を失っている
という計算です。さらに制度不備であることで発生確率
が跳ね上がる「係争リスク」を考えると、補償金や弁護士費用、幹部陣や本社社員に
よる対応時間、操業停止に伴う損失や顧客への賠償、諸々で、通常3千万円から1億円
くらい掛かります。決して看過してよいリスクではないと言えるでしょう。