[2012年9月号] 労働紛争審理の司法解釈(四)

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  今年6月に全国最高裁判所は「労働紛争審理の若干の問題に関する司法解釈(四)」の意見聴取案を公布し、7月末まで意見を徴収していました。これは正式に公布された後、裁判所で審議の根拠となるものです。「司法解釈(三)」の公布は2010年でしたので、今回の(四)は、約2年間の裁判を通じ、裁判所が新たに「見解統一をすべき」と考えた事項と言えるかと思います。まだいわゆる「草案」であり正式の内容とはなっていませんが、人事管理に関わる事で、注意して頂きたい部分に関し、「草案」の要約をお伝えします。 
 

●「社内規定の民主プロセス」:会社が、労働者の切実な利益と直接関連する規則制度や重大な事項を作成・修正・決定する際に、労働契約法の第四条に定めた民主プロセスを通過していない場合、裁判所が労働争議案件を審議する根拠にはならない。(民主プロセス:労働者代表大会あるいは全労働者との討論を経て草案をまとめ、工会あるいは労働者代表と協議し確定すること)
 

●「競業制限」:会社と労働者が労働契約あるいは機密保持契約の中に、競業制限の約定をしたが、労働契約解除・終止時の経済補償を約定していない場合、会社が労働者に競業制限の条項を履行することを要求しても、裁判所は支持しない。逆に、労働者が競業制限条項で約定した義務を果たしたのち、会社に労働契約解除あるいは終止前の12ヶ月の平均賃金を基準とした経済補償を要求する場合、裁判所は支持する。
   会社に過失があるまたは違法解雇をした場合、会社が労働者に競業制限義務の履行を要求しても、従業員が引き続き履行を同意する場合以外、裁判所は支持しない。
  競業制限期間中に、会社あるいは労働者が競業制限条項を解除したい場合、協議で合意に至らなければならない。合意できない場合、当該競業制限条項は引き続き拘束力がある。商業秘密あるいは知的財産権の関連事項が公開されたという理由で、会社が労働者との競業制限の条項を解除したい場合、60日前に労働者に書面通知しなければならない。

●「契約変更」:
書面ではなく口頭だけで労働契約内容の変更がなされた場合、違法性がなく合理的で、その内容が1年間疑義なく履行されれば、当該変更は有効となる。
 

●「契約解除と工会」:工会を持つ会社が、協議一致以外の理由で従業員を解雇する場合、事前に工会に通知しなければならない。通知がない場合、労働者が会社に違法解雇で2倍の経済補償金を要求する際、裁判所は支持する。
 

  今回の草案で提出された内容がそのまま正式に公布された場合、今後の社内手続きで気をつけて頂くべきポイントが多いかと思います。例えば「競業制限」の約定をするのであれば、内容に「権利」と「義務」とを必ず盛り込まねば効力はありません。また「社内規定の変更」や「労働契約解除」の際、必要とされる手順を踏まねば認められません。最新情報は、弊社HPやメールマガジンを通じお伝え致します。