[2011年7月号] 外国人の社会保険加入問題と現在中国の実情

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  今回は、昨年10月末に日本の新聞でも大きく取り上げられた「外国人への中国・社会保険加入問題」と昨今の中国・現地法人を取り巻く状況についてお伝えします。

   先日、中国における外国人社会保険加入問題に関連して、中国の中央政府・労働部(人力資源社会保障部)より『中国国内に就業する外国人の社会保険加入に関する暫定施行弁法(草案)』が公表され関連各所に対して意見の徴収が行われました。今回の意見募集は、6月17日に締め切られ、現在内容について審議されているものと思われます。

 

   現状では、「草案」の段階ではありますが、草案内容や国際的な常識から考えても、常駐・就労する外国人に中国の社会保険加入が義務付けられる方向に動いていくことは、ほぼ間違いないかと思われます。

 

  「社会保険法」の施行日は7月1日となっているものの、外国人の社会保険加入については、7月では準備が間に合わず、時期や地域的にズレのある状態から実施されることが予想されます。というのも草案では、外国人にも「社会保険番号(年金番号)」と「社会保険カード」を発行する、とされているからです。中国の公民に対しても身分証明書番号がなければ社会保険に加入手続きができない実務的な問題を、外国人に対してどのように対応するのかが注目されていましたが、外国人に対しては、「社会保険番号を付与」するという方法で対処するようです。この統一だけでも時間がかかり、全国で7月1日から実施というのは非現実的と思われます。
いずれにせよ、「正式に決定」されたものではありませんので、中央政府からの弁法の公布及び地方政府の細則の公布を待たなければならない状況です。
 

   これは、進出企業にとっては、新たなコストアップ要因であり、また駐在員にとっては「日本の社会保険との二重加入」が問題視されています。しかし、「自身にとって不利であること=中国の不当な行為」とは言えません。「社会保険の二重加入」を避けるには、国家間で「社会保障協定」を締結することで解決できる道筋はあります。日本と中国がその協定を締結していないだけであり、自国で就労する外国人に自国の社会保険への加入を義務付けるのはむしろ当然の行為と言えるでしょう。中国との協定締結が急務と思われます。 

  

その他、ウワサされている「賃金条例」「中国人の社会保険制度の改正」などコストアップ要因が目白押しです。先日も今まで有名無実化していた30年前の制度「1人っ子手当」が12倍に増額され、企業に2011年1月にさかのぼって適用・負担を要求するという通達が上海で発布されています。他にも、原油などの燃料費の国際的な価格高騰による物流コストや原材料コストの上昇も現地法人を苦しい環境にさらしています。一方庶民も、食料品に代表される物価高が生活を直撃しています。

  

中国に長く赴任している日本人総経理から、「本社は経費削減ばかりを言ってくる。いったい、この状況で何の経費を削減しろというのか?本社の無理解にはストレスが溜まる一方だ」というお嘆きの声がありました。中国は変化し続けています。日本の当たり前を主張する前に、ぜひ現地の声に真剣に耳を傾けてください。
「みんなと同じでは、みんなと共に没落する時代」になっているかもしれません。