[2010年7月号]中国の残業・有給、再確認

  2010年も約半分が過ぎました。今年に入り、新たな進出や人材募集のお話を頂くことも昨年に比べ、増えてきております。さて、従業員が増えると懸念されるのが労働仲裁などの労務リスク。今回は運用時の「無知」が
原因で労働仲裁に陥ってしまい、会社側が敗訴してしまう事も少なくない2つのポイントについてまとめてみました。

≪ 残業(時間外労働) ≫
中国の法規で、残業について規定された主要な内容をまとめると以下のようになります。
【残業時間】1日:3時間以内、月間:36時間以内。
【残業計算式】
1、 平日残業 (約定給与÷21.75日÷8時間×残業時間)×150%
2、 休日残業  (約定給与÷21.75日÷8時間×残業時間)×200%
※まずは、「代休」付与。「代休」を付与できない場合は上記200%で算出。
3、 法定休日残業 (約定給与÷21.75日÷8時間×残業時間)×300%
 ※「代休」処理は不可。法定休日に出勤した場合は無条件に300%で算出。
【従業員の権利】従業員は残業を拒否することができる。
※会社は必要に応じて労働時間を延長することは認められていますが、法律上は「工会・
従業員と協議の上」(労働法)、「強制・強要してはならない」(労働契約法)と定められ
ています。運用時にはご注意ください。

中国でも日本の「変形労働時間制」に相当する「総合労働時間制」という制度があります。日本では社内での必要手続きの後に労基署などに「届出」することで認められるようですが、中国では労働局(人力資源社会保障局)への「申請・許認可」が必要となります。
また、日本の「みなし労働時間」や「管理者への残業(時間外)規制の適用除外」に近しい制度が中国の「不定時労働時間制」です。こちらも「総合労働時間制」と同様に当局への「申請・許認可」が必要となります。外回り中心の営業職などにはほぼ問題なく適用できる制度なのですが、日本のように「課長職」であることを理由とした申請はまず、却下されます。
加えて、この双方の制度は「年度更新制」となっていますので運用時にはご注意下さい。

≪ 年次有給休暇 ≫
  法規制定時は若干の混乱が見られた中国の「法定有給休暇」ですが、現状では以下のようにまとめること
 ができます。
【付与日数】累計の就業年数によって決定される。(入社以前の前職からの「累計」年数)
 ※ 1年以上10年未満「 5日」、10年以上20年未満「10日」、20年以上「15日」。
【発生時期】過去に1度でも「12ヵ月連続勤務」があった場合は、「入社直後」から発生。
【買取り計算式】(残業手当分を除いた直前12ヵ月の平均給与÷21.75)×[200%]
     法律文には「300%」と記載されていますが、ここには「通常給与も含まれる」ため、買取り計算時には[200%]で算出します。

このような基準は、「労働仲裁」などの第3者機関が裁決する際の基準と言えます。現在の実運用上に差異がある場合、そこが「労務リスク」と考えることができるかもしれません。このような「法定基準」については、弊社刊『上海市人事・労務の法知識2010』などの専門解説書をご利用いただくなど、正確な情報収集を心がけて下さい。