2019年も既に第1四半期が終わり、4月より第2四半期が始まっています。上海市では毎年この時期になると前年度の上海市平均月額賃金が発表されます。中国には各都市で発表される平均月額賃金を指標数値に使う「住宅積立金制度」というものがあります。経営者の皆様は、社内の財務資料の中で「住宅積立金」という言葉を目にされているかと思われます。今回はその日本には無い制度、「住宅積立金制度」についてご説明させて頂きます。
既にご存じの方もいらっしゃるかと思われますが、まず住宅積立金の概略をご紹介します。
①住宅積立金とは国家機関、国有企業、外商投資企業、民間企業などで就業する従業員
が利用(加入)できる制度。
②住宅積立金で積み立てた金額は①で就業している従業員が住宅を購入、新築、リフォームする際に使用できる。
③住宅積立金は従業員の給与から積み立てると同時に、雇用している企業も拠出する。
④住宅積立金の納付比率は労使とも該当する従業員の前年給与平均月額賃金の7%。
上記④について今年2月12日付で国務院より
「2019年上海市住宅積立基金調整のベースライン、比率および毎月の支払いに関する通知」が発表され、住宅積立金納付比率について4月1日以降は5%~7%の範囲で各企業にて定めてよい、ということになりました。(住宅積立金センターに届け出は必要)
これにより例えばですが、住宅積立金を今まで労使ともに各7%の納付を行っていたのが企業側の判断で5%にすることができ企業側が拠出する金額を減らすことができます。また従業員側にとっても毎月の手取り額が若干ではありますが増える事になります。(※労働契約が税込給与契約になっている場合)
このように企業側、労働者側双方にとってメリットがあるように見えますが以下の点に注意が必要です。
・従業員側からすると積立額が減る⇒企業側からの拠出が減ることになる為、考え方によっ
ては「会社から得られる総額が減るのは嫌」ということで不満を持つ可能性がある。
・一度変更をすると、向こう1年は元に戻すことができない
。(1年に1回のみ変更可)
・また新たに人員採用する際に、住宅積立金納付比率も求職のチェックポイントにされる可能性がある。
故に単純に「企業の負担が下がる」だけで進めるのではなく、変更した結果、社内にどのようなことが起こるのか?などを考慮しながら検討されることをお勧めいたします。