【2019年1月】定年年齢と退職について

jinjiroumu_rogo.png

人事労務20181226.png

(1) 定年年齢に達したからといって労働契約が終了するとは限らない

中国労働契約法施行条例第21条は「労働者が法定の定年年齢に達したときは、労働契約を終了する」と定めています。日本も同じ考えを採用しています。

何だ、当たり前のことではないか?と思われた方も多いと思いますが、実は中国の労働法では「定年年齢と退職」は未だ決着がついていない論争なのです。

労働契約法第44条2号は労働契約が終了する場合として、「 (2) 労働者が法により基本養老保険待遇を受け始めている場合」を挙げており、定年年齢に達したとき労働契約が終了するとは定めておりません。しかも、社会保険法の規定により、基本養老保険年金を受けるには、(1)労働者が法定退職年齢に達すること、(2)15年以上の納付をすることが必要であるため、法定定年退職年齢に達したとしても、必ずしも基本養老保険年金を受給できるとは限りません。そのため、法定定年年齢に達したとしても基本養老年金を受給していない場合は労働契約が終了しない可能性もあるのです。

(2) 定年後に経済補償金を支払う可能性も

中には定年年齢を超えても会社が従業員と労務契約も締結せずにそのまま仕事をしてしまう事例があります。その場合、定年年齢後も労働契約は終了していないと扱われ、会社が解雇をしたり、退職勧奨をして退職をしてもらう際に多額の経済補償金が発生する可能性があります。日系企業も、特に女性の定年年齢は50歳(管理職は55歳)と男性よりも低いため、最近定年に達する従業員が増えており注意が必要です。

各地の裁判例では、会社で定年年齢に達した後も年金を受給せずかつ労務契約を締結せずに働き続けていた場合、会社と従業員は未だに労働契約関係にあるとして、会社が契約解除をしたことについて経済補償金を支払えと命じているものがあります。

(3) 実務上注意するべき点

実務的には①定年年齢は何歳か②年金を受給する資格があるか・年金を受給するか③退職手続き・労務契約の締結の3点に留意するべきです。①の定年年齢ですが、女性の場合でいうと管理職は55歳、その他の非管理職は50歳となりますが、管理職の定義は各社の就業規則で定めることになります。そのため、自社の定義にあてはめて対象者の方の定年が何歳なのかを事前に確認する必要があります。②年金を受給する資格が無い方も時折おりますので、年金の受給資格があるか・年金の受給を受ける意思があるかを定年前に確認する必要があります。③定年年齢に達した場合は退職手続きを取り、もし働き続ける意思がある場合は労務契約書を締結することで、紛争が起きるリスクは限りなくゼロに近づきますので、人事担当者に指示をしてきちんと手続きをするように促す必要があります。