最近、現地法人のお客様から債権回収の相談が増えてきており、中国の景気が悪くなってきていることを実感しています。日系企業は雇用維持に努める傾向が強いですが、背に腹は代えられず、人員削減に踏み切るお客様も増えております。
字数の限り、本稿では最近の中国の人員削減の現状について述べたいと思います。
1 労働契約法41条の適用は難しい
人員削減については、本来は民間企業が自己責任で行うべきことですが、中国労働契約法41条では「20 人以上又は 20 人未満であって企業従業員総数の 10%以上の人員削減が必要な場合は、使用者は 30 日前までに労働組合又は全従業員
に対し状況を説明し、労働組合又は従業員の意見を聴取後に、人員削減方案を労働行政部門に報告したうえで人員削減を行うことができる。」と一定規模の人員削減については政府に報告した上で人員削減を行うことができます。
ところが実際は、労働局は何らかの理由をつけて労働契約法41条の申請を受理しないことが多く、少なくとも上海では労働契約法41条の適用は難しい状況です。政府が人員削減を認めてしまうと人員削減がこじれた場合矢面に立ってしまうことを恐れているためであると考えられます。
2 労働契約法40条3号による人員削減
労働契約法40条3号は「労働契約の締結時に依拠した客観的な状況に重大な変化が起こり、労働契約の履行が不可能となり、使用者と労働者が協議を経ても労働契約の内容変更について合意できなかった場合」は解雇をすることができると定めております。
現在は労働契約法41条を適用することが難しいため、現労働契約法40条3号を用いて人員削減を行うことが増えております。
例えば、人件費の上昇や大口の取引先の減少などを理由に上海の工場を閉鎖して、他の蘇州工場に集約する場合、「労働契約の締結時に依拠した客観的な状況に重大な変化」が起きたため、会社が蘇州工場での勤務を提案し、蘇州勤務に応じるか、合意退職に応じるかについての「協議」を行い、それでも合意できない場合に解雇を行うことになります。
3 中国における人員削減は一気呵成に行う
中国における人員削減は日本と異なり、一気呵成に行うべきです。日本の様に希望退職を、時間をかけて行うことはせずに、特定の日に発表して、その日のうちに個別面談を実施して合意退職書を取り交わします。日本と異なり集団行動により工場の製造ラインが止まったり、仕事をボイコットすることがあったりするため、事前にシナリオを作り、一定の制限時間内に説得します。最悪の事態を想定して、在庫等、事前に準備をすることが重要となります。