経営コンサルタントの谷です。前回(9月号)「中国現地法人で目標管理制度は機能するか?」の続きです。
多くの日系企業様で、「目標管理制度は、人事評価のなかで、業績評価の機能を担うパーツである」と位置づけられています。必ずしも間違いとは言い切れないのですが、このとらえ方が一般化してしまうと、社員にとって目標管理は評価のためのもの、という前提になってしまい、いかに公平公正、正確な評価をするか、という観点での検討に終始してしまいます。また従業員から見れば、いかに高い評価を取るか、ということに関心が向いてしまいます。
前回も少し触れましたが、目標管理制度は、決して人事評価のためのものではなく、あくまでも経営成果を高めていくためのマネジメントツールであるというところからスタートする必要があります。そうであれば、部門ごとに異なる書式が使われても、異なる目標水準が設定されていてもいいですし、優秀な社員(成果を上げることが期待される社員)には、大きな目標を、そうではない社員にはそれなりの目標を与える中で、それぞれの立ち位置で頑張ってもらえるように工夫していくということは、マネジメントを少しでも知っている方なら「当たり前」だと思っていただけるでしょう。
大切なことは、ひとりひとりの社員がそれぞれに高いモティベーションを持てるようにし、今期一年間で会社にどのような貢献をするのかを、経営側に対して約束するということです。マイツグループで採用しているBSC(バランススコアカード)では、次の4つの視点でどのような約束ができるかを考えてもらうようになっています。
① 財務の視点 数字での成果が計測できるポジションにある社員は、売上や利益、コストダウン等の財務的に明解に確認可能な目標を立てます。
② 顧客の視点 お客様にサービス提供するポジションにある社員は、お客様が当社に対して感じていただける価値を高めるためのサービス品質向上や、ご理解の促進等の取り組みを行動成果として設定します。
③ 業務の視点 全てのポジションの社員が、自分の担当する業務を改善し続けなくてはなりません。その改善行動と、改善成果を設定します。
④ 人材の視点 部下のいるマネジャーは部下育成を、またマネジャー含む全社員が自身の成長と周囲に対するリーダーシップの発揮に関し、そのための行動と成果を設定します。
弊グループにおいても、この約束を、全社員に提出してもらうようになって、まだ2年目です。残念ながら、全ポジションにおいて、「誰が見ても充分に意欲的で、かつ経営にとって価値があり、本人の頑張り次第で達成の可能性が信じられる」という文句なしのレベルで記載できているとは言えません。期末にその達成度評価を行う際には、環境の変化に対応しきれず、結果としてあまり意味のない項目になってしまったね、ということも起こりえます。
そのため、現状ではBSCの達成度を人事評価にダイレクトに反映させるのではなく、あくまでも評価にあたっての参考資料として用いています(ガイドラインはありますが、100%適用される規程ではありません)。それ以上に、マネジャーが、毎月全メンバーの業務推進状況をレビューし、目標達成のためにどのような行動が必要なのかを話し合って、何度も何度も動機づけを行うことこそが、目標管理制度の本筋であると考えてい
るのです。