経営コンサルタントの谷です。今回は「中国現地法人で目標管理制度は機能するか?」というテーマです。まず結論から申し上げます。「非常に難しいです!」
私もそれなりに多くの現地法人様とお付き合いしてまいりましたが、目標管理制度を導入されて、満足のいくレベルで活用されている会社様は数えるほどしかありません。
まず第一に、目標が立てられない。中国人はそもそも目標や計画を立てることが嫌いなようです。言質を取られると思うからなのでしょうか、過去に計画経済が破綻したというトラウマがあるからなのでしょうか、「そんなものは不要!」と断言する傾向は、中国人の経営者さん、一般のサラリーマンさん問わず共通しています。日本人経営者はまずここをクリアしなければなりません。目標を持つことの価値、計画を立てることによる効果、更にそれらを「自分で」立てることによる意味を腹落ちさせなければなりません。
第二がこの「自分で」という部分です。押し付けられた目標なら「承知してない!」と言い訳ができると思うのでしょうか、まあ取り敢えず受け入れてくれるのですが、自分で作りなさい、ということになると驚くほどおかしな目標設定をしてきます。目標を作る能力が根本的にないなんてことは考えられませんから、やはりどこかでサボタージュしているのでしょう。上司の目標に対して、項目を微妙にズラしてきたり、数字を異様に低く書いてきたりします。「高い目標を立て、それを達成してこそ価値がある」なんて言葉がだんだん空虚に思えてきます。
第三に「変化に適切に対応しようとしない」こと。期初に立てた目標は、期初に予想した事業環境下での目標であって、時間が経過すれば意味をなさなくなることがあります。目標管理制度の主眼の一つに、上司と部下がしっかりと相談し、必要があれば柔軟に変更して最善の事業推進をしていくということがありますが、目標修正しようとすると「自分に都合よく変えていいんだ」と捉え、あくまで初志貫徹させようとすると逆に「状況が違っている」と主張してきます。疲れます。
さて、では中国では目標管理は無理なのか、というと私はそうは思っていません。逆説的ですが、「人事評価、業績評価のため」だけと考えるならやめておいた方がよいけれど、マネジメントレベルを高めることを、執念を持って、経営側が本気でやり切ろうと思われるのであれば、非常に優れた手法であることも確かです。マイツグループでは目標を立てるための視点として、全社的にBSC(バランス・スコア・カード)という手法を用いています。
総経理のミッションとして全社目標をしっかりと理解させ、部門目標に落としこむ作業を幹部陣が繰り返し行い、部門目標を個人目標に落とす際には上位職者が丁寧にサポートする、さらに期中にできれば月1回、少なくとも四半期に一回、目標の見直しと達成のための対策検討ミーティングを確実に実行していくことができれば、年々マネジメントレベルは上がっていきます。
縦軸に上位組織目標、横軸に下位組織または構成員をプロットした目標マトリックスという書式がありますが、これを全社で使いこなせるようになると、景色が変わってきます。
ということで、今回はここで字数制限いっぱいになってしまいました。続きはまた次回に!