2016.02.01
営業企画部 片瀬陽平
コラム第12回
最近は海外進出を行っている会社の社長と話をすると、海外での不正を気にされている社長が多いように思います。中小企業で果たすべきCFO業務とは少し一線を画しますが、今回は海外で行われている不正についてお話ししようと思います。
まず不正の種類について把握してみることにしましょう。
①財務報告の不正
→資産負債の過大又は過少計上、隠ぺい、改ざん・・・粉飾決算に関連
②資産不正
→現金・在庫・固定資産の窃盗、経費の不正支出
③汚職
→利益相反行為、利益供与、賄賂、販売購買に伴うキックバック
日本企業の多くは①の財務報告の不正に主に注目することになりますが、海外では資産不正や汚職など実際には多くの不正が存在します。その中でも不正の調査等による発見が困難な不正の一つに“簿外処理”というものがあります。
中国での実例に基づいて簿外処理というものを説明させて頂きます。
<簿外処理の例>
中国子会社A社の日本人総経理aは10数年中国へ駐在し、日本本社からの
信頼も厚く、取引の決済権限も与えられていました。ただし、10数年前の中国では取引先からリベートを要求されるとい商慣習がまだまだ残る国であり、日本人総経理aはその中でビジネスを拡大させなければならないために、中国の商慣習に従い一定のリベートを払いながらビジネスを拡大させていきます。ただし、取引先の中には多額のリベートを要求するところなどもあり、当初は断っていた日本人総経理aでありましたが、日本本社からの予算達成のプレッシャーも関係したのか、多額のリベートを次第に払うようになります。もちろんキャッシュに限界があるために、日本人総経理aはある方法を思いつきます。
それが今回の簿外処理となります。中国の商慣習において取引先によっては発票の発行が要求されないところがあり、受領代金を帳簿外で処理することができます。発票が発行されずに現金が手に入るために、日本人総経理aは次第にその金額を裏金庫呼ばれる自分専用の金庫に溜めるようになりま
す。多額のリベートを要求する担当者の要望に応えるべく、日本本社に予算の達成を報告するべく、この日本人総経理aは裏金庫にお金を貯め続けます。
ただし、このスキームも経理部員の内部告発により発覚し、長く続くもの ではありませんでした。
正直、親会社の内部監査チームが2~3年に一度子会社を訪問し、業務の実態調査を行ったとしても、この裏金庫を見つけられなければ事態が明るみに出ることはないと思います。それぐらいこの簿外処理は発見が難しいのです。
では、この簿外処理を予防するためにはどのようなことをすれば良いか、次はそのポイントについて記載します。
<ポイント>
①会計担当者と財務担当者は別担当者になっているか。
②出納管理規程は整備されているか。
③会計担当者、財務担当者が身に余るブランド品や車などを購入していないか。
④発票不要の現金売上についても売上計上されているか。
⑤定期的に現金実査を行っているか。
特にある程度の規模になると、財務担当者・会計担当者が不正を働くことも多くなります。③の身に余るブランド品や車から発覚することも中国や諸外国で意外と多い実情があります。
我々のクライアントにおいても中国やインドネシア、タイ、ベトナムなどにおいて、業務の実態調査を行ってほしい旨の要望がここ最近多くなってきており(循環取引などで大きな問題となる日系企業がここ数年増えているため)、その要望に応えるためにASEAN各国にて不正調査や業務実態調査、内部統制調査などの業務を行っています。
また、4月頃には不正セミナーを改めて行うことを計画(今回は会計、法務、システムの3つの視点から不正を紐解く)していますので、ご興味のある方はマイツグループHPより3月頃に掲載されるセミナー情報をご確認ください。70人規模のセミナーとなる予定です。
海外拠点を任せられると利益が至上命題となり、それが現地駐在員を縛ります。もちろん利益は大切ですが、それよりも親会社からの駐在員への気遣いやフォローを大切なものと位置づけて取り組んでみてください。多くの会社が現地の駐在員とはあまりかかわらないようにしていることが第3者としてみていると良くわかります。現地は現地と切り分けるのではなく、グループ全体の利益をどのように上げていくべきなのかを真剣に考えて取り組んでいただければと思います。